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メディアに登場したホットな同窓生をご紹介(敬称略)
山神 孝志 (昭和60年卒
)
教え教えられ
試合中の一コマ
野球少年の私がラグビーを始め、25年以上もラグビーに係わるとは想像もせず、ただその原点を考えると岡山朝日という学校で過ごした影響は少なくない様に感じる。今では想像もつかないが、早慶明同という伝統校が覇権争いをする大学ラグビーは、当時最も人気のスポーツで、国立競技場に6万人以上の観衆を集める正月の大イベント。ドキュメンタリー番組から伝わる極限まで気持ちを高ぶらせ、戦いに臨む選手の息遣いが、多感な時期の高校生に与えた影響は少なくなかった気がする。
またテレビドラマ「スクールウォーズ」の影響からか、朝日高ラグビー部も多くの部員がおり、同じ中学から進学した家倉孝志君・池田研也君・木和田学君が在籍。同級生の応援観戦や、冬場の体育授業で、ある程度ルールも理解し、プレイしたラグビーは身近なスポーツで、実は私も公式戦に一度出場させてもらった。
一年間の補習科生活後、同志社大学経済学部に進学し、野球を選ばずラグビー部に入部する。ここにも中学・高校の同級生で現役合格しラグビー部在籍の馬場一宏君がいた。甲子園出場者が多く、厳しい体育会然とした野球部より、友人がいて自由な気風のラグビー部に魅力を感じた。とは言え2年前に3年連続で大学日本一を果たしたチームに入る決意をした私は、体育会に関し無知で、恐れを知らなかったものだと思う。
私のコーチングの原点は二つ。一つ目は13年連続初戦敗退の野球部が、夏の岡山県予選で準優勝した経験。野球部部長の宇根先生の下、一学年上の先輩たちと実践した創意工夫により、力の劣るチームの結果が変わる事を学んだ。力の無いことを逆手に取り、大胆で思い切った戦術で結果を出した。二つ目は大学4年生の秋、恩師の故岡仁詩先生の「対戦相手の分析役」の打診、日本一を目指す上で求められる自分の役割と考え、引き受けた。週末には別会場で対戦相手の試合を撮影し、合宿所に戻り分析。月曜日に岡先生の研究室で対戦相手の分析報告や、次戦の戦術議論を通し、コーチの視点や思考を磨いてもらった。感じて考えるというベースが形成された。
教職志望で母校にて教育実習したが、岡先生からラグビー部を新設する(株)クボタを推薦され入社。新興チーム故にマネジメント人員も不足しており、引退後にチームスタッフ、コーチの役回りを与えられ本格的に指導者への道に進む。振り返ると岐路では、常に求められる場を選び、諦めず止めなかったことで今日に至った様に思う。
練習にて
東芝を3年連続日本一に導いた薫田真広監督が、23歳以下の日本代表監督に就任、求めに応じ若手代表の育成に加わる。最後まで全うできなかったが、2015年ワールドカップに向け、エディー・ジョーンズとも仕事をする機会を得る貴重な経験もした。2010年にスコットランド・スペイン遠征したジャパンAチームでは、五郎丸選手も一緒だったので、今回の大活躍は本当に嬉しかった。
大学の指導は、三洋電機(現パナソニック)を初の日本一に導いた2学年先輩であり、低迷する同志社再建を託され宮本勝文さんが監督就任、「コーチを手伝え」の一言で、東京から京都へ週末通う生活が始まる。後任監督の要請を受け、会社の理解を得て大阪転勤、人事部に所属、定時後に京都に通い指導する日々が続く。
元立教新座中学・高等学校長の渡辺憲司先生が著書「時に海を見よ」で、『大学時代は多くの時間、負けが先行する時代だ、(中略)「なかなか勝てない自分」を感じ始める時期なのだ。(中略)ノックアウトされた自分をどう迎え入れるのか、失敗した時にどんな形で自分を律するのか、である。その意味で、大学時代は、自分なりの「負けの美学」を構築していく時でもある。』と仰っており、私も同様に感じる。
指導ゴールは、「社会に求められる人物の育成」。大学日本一はその手段であり、目標ではない。チーム愛を高め、モチベーションを与える事が私の役割と考える。今回8年ぶりの関西リーグ優勝を勝ち取った105代目の4年生は、チーム目標の共有を深めるミーティングを重ね、4年生で役割を決め、同級生にスタッフ転身を促し、新チームスタートに臨んできた。
関西リーグ優勝メンバー
試合後インタビューにて
170名の大所帯をいかに目標達成に向けて心ひとつに導くか。全国から英俊の集う同志社にあって、同級生・後輩とのレギュラー争いに常に新入生が加わる。「諦め」の空気はチーム力低減につながるため、「負けを認めさせる」場もある。プレイヤーでは日本一に貢献できない自分をどうやって受け入れるか、辛い選択だが、スタッフ転身を勧め、学生コーチ・アナリスト・トレーナー・レフリー・マネージャーなどの役割を与え、新たな役割を通し、チームに貢献する事を求めてきた。誤解無いように伝えているのは、「人格を否定するのではない、役割を変えてラグビーへの情熱を注いで欲しい。」という事。
チームワークで危険なサインは、「誰かに託し始める事」。誰かに託し始めると、練習の熱量が下がってくる。こういった現象は、全ての組織に通じるものと思う。重要な項目は、「明確な目標」「役割分担」「自主性」。自らが考え、思い、役割を見出すこと、これは母校の「自主自立」の精神と同じであり、私の中で大切にしている言葉でもある。
2015年度公式戦が始まり、昨年と変わったことが有った。一1年生が務めていたボールボーイを4年生が行い、グランドレベルで共に戦う。スタンドでは、4年生が応援リーダーを務め声援で後押しする。10年ぶりの全国4強は2点差で逃したが、共に戦う役割を探し、開幕ゲーム敗戦によって後の無くなった状態でも戦い抜いた学生を誇りに思う。社会に巣立つ4年生は、1年生の時に大学選手権出場を逃した風景を知っている。その時と、がらりと違う風景を見て、「運命に挑む」力を得てくれたならと願う。
新チームの練習スタート、明らかに学生の熱量が変わった。こうした学生の変化を感じる事は嬉しく楽しい。「教え教えられ」この気持ちが有る限り、コーチングへの興味は尽きず、まだまだグランドに立っていたいと思う。
2014年度関西大学Aリーグ 近畿大学戦
2014年度全国大学選手権 早稲田大学戦
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