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ドールクラシック |
初めまして、昭和51年卒業の木原幸子です。現在はお人形を制作しています。
倉敷にずっと住みながらも、高校時代を振り返ることもそれほどしないで、これまで過ごしてきたような気がします。その状況が一昨年頃から少しずつ変わっているのを感じています。
一昨年11月、銀座松屋での個展の時、東京方面の同級生が会いに来てくれました。
なつかしい顔に会えるたびに、東京の個展は初めてで緊張していた心がすっと解けていくように思えました。
また、昨年末、天満屋岡山店で人形展をさせて頂いた時には、30年ぶりに、たくさんの友人と再会することができました。
何年もの年月会っていなくても、学生の時を振り返り、昨日も会っていたように話ができるような日が来るなんて、高校生の時には考えてもみないことだと、嬉しいような不思議な気持ちでいっぱいでした。
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西域憧憬 |
☆私と人形づくり
私がはじめてつくった人形は、"布"ではなく、"土"つまり、やきものでした。
学生時代、鹿児島寿蔵さんのつくられたテラコッタの人形に魅せられた私は、時と共に、寿蔵さんの世界のとりこになっていきました。
「卑弥呼」「古都幻想」と、土でその姿を真似てみては楽しんでいました。
布で洋風の人形をつくるようになってからも、やはり、寿蔵さんのことや、自分が日本人、東洋人であることが、頭から離れず、着物を使っての人形づくりも始めました。
現在私のつくる人形のテーマは子供の頃からの憧れの洋風の人形、西域がテーマの人形、また、妖精、恋をモチーフにした人形など、少しずつ広がっています。
これからも、気の向くまま、風に吹かれるようにつくっていけたらと思っています。
☆ハリーポッターの人形制作について
昨年は、20数年お人形をつくり続けている私にとって、新しい一歩となる記念すべき特別な一年となりました。
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ハリーポッター |
それは、一昨年11月に始まりました。銀座松屋での個展最終日、突然そのメールは飛びこんできました。
「ハリーポッターの人形をつくってもらえませんか」と。
この一言が、彼と私の最初の出会いでした。
あのワーナーブラザースより世界中で大ブームを巻き起こした「ハリーポッター」シリーズの本の世界のヒーロー「ハリー」の人形の依頼があったのです。
これまでの私の人形は私の感性の中の個性を一体ずつ気持ちを込めて手仕事でつくり上げた作品です。けれど、ハリーポッターという世界中に知られた、かつ、強烈な個性を持った彼をどう表現すればいいのかという不安と、あまりにも大きな存在に経験したこともないプレッシャーもありましたが、また、少しずつ膨らんでいくイメージに楽しませてももらいました。
そして、昨年6月、私の頭の中でたまごだったハリーもちょっと素敵な少年に育ち、羽のそろったヒナが飛び立つように元気よく旅立っていきました。
嬉しいことに私のつくった3体のハリーは「横浜みなとみらい」をはじめ、日本各地で大勢のハリーファンに迎えられました。
そして、地元岡山で立派になった息子に再会出来た私はやっと子離れできた母親の心境でした。
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夢のかたりべ |
すべてが終わり、今、思います。私はハリーを通じて本当に「勇気と友情」を伝えることが出来たのだろうか...「思いを形に表現する」ことが出来たのだろうか...と。
でもハリーは、私に新しいことに挑戦できる確かな手ごたえを与えてくれたと思っています。
今年は5月に広島天満屋八丁堀店、アルパーク店、12月には天満屋福山店での個展、また9月には福山「くわみつ」にて童話を主題にした二人展をさせて頂く予定です。
私のつくった人形たちが、ひとりでも多くの方に、たったひとつのメッセージでも伝えることができれば、そんな嬉しいことはありません。