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国内で活躍する同窓生(敬称略)


金子 元 (昭和 60年卒)    北海道夕張市在住

思えば遠くへ来たもんだ
五校戦
(旗手を務める筆者)
 こちらは北海道夕張市、2001年より快速旅団というお店を営んでおります金子元(かねこはじめ ‘85卒)と申します。お店の名前は私自身が高校・大学と応援団に在籍したことにちなんでおります。卒業アルバムを見返すに、五校戦当時には旗手を務めていたので自分がどこにいるのかわかりやすいのがいいところです。

 さて、私がどんな商売をしているかは後述するとして、まずは最もよく聞かれる「なんで夕張?」という点について。夕張市、かつて炭都として栄えたことから 良くも悪くも“教科書に載る町”として知名度は抜群。札幌・千歳・苫小牧といった主要都市からは車で約1時間、富良野でも1時間半とターミナル性があり、札幌の半分以下のコストで開業できるのもメリットでした。また、映画「幸福の黄色いハンカチ」の山田洋二監督を敬愛していたこともあって夕張を選んだ次第です。開業して5年ほどして町の財政悪化がクローズアップされるようになりましたが、それはまた別なお話。

 渡道してからだと18年。故郷岡山で暮らした時間よりも長くなったことには我ながら感慨深く、以下、北海道に移り住んでの実生活的なレポートを連ねてまいります。


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◆どっこい生きてる雪の中

 「北海道と言えば冬寒い」、気象情報で真冬日を連日記録しているのをご覧になっておののいてしまう方も少なくないかもしれません。しかし、低温自体は生活自体にそうそう支障はない。そりゃそうです、衣服も暖房設備も段違いに優れているわけですから。

 実際のところ生活していて難儀を感じるのは気温の問題よりも日照時間の方かもしれません。緯度経度の問題で夏はムダと言えるほど朝が早く、冬は冬で狂おしいほどに日没が早い。特に冬の日の短さは生産性に相当な影響を与えているように感じているところです。

 もう一つ、雪。我が町ですと一冬の降雪量が700〜900cmと言われています。ただ、降雪=積雪となるわけではなく、地上で圧縮されていくので積雪量としては150cmあたりに落ち着きます。気温の低さが幸いして雪は軽いので日々の除雪はそれほどの労苦でもないです。が、今年の3月には“気温が高い状態での吹雪”となって、こればかりはネを上げそうになりました。


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◆海産物より農産物

 「北海道と言えば豊富な海産物」と食欲をかきたてる方も多いかとは思います。が、道民がカニやウニを毎日口にしているかと言えば当然それはありえません。

 それよりも当地で誇るべきなのは農産物の類。ジャガイモの産地であることはよく知られているところ。それに加えてニンジンやタマネギの生産量も豊富です。さらに水が美味いことも特筆すべきかと。ジャガイモ、ニンジン、タマネギの産地で水が美味い、すなわちカレーや肉じゃがといった日常的な料理の方で恩恵にあずかっていることを実感しています。

 一方、「夕張と言えばメロン」。近所のお店でご贈答に供するには鮮度が落ちたタマが回ってくるのは役得と認めないわけにはいきません。なお、夕張メロンがお高いのには理由がありまして、真冬の雪深い頃からハウス内でボイラーを焚いて7月のお中元シーズンに合わせる、という生産法を採っているのがコスト増の要因と聞いております。このあたり、8月に向けた作付け品について「○○のメロンだと安くて同じようなもん」という声を聴くたびに市民としてもどかしく思うのです。


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◆野生との対峙

 「北海道ではクマが危険」、もちろんそれはそうなんですが遭遇頻度からすればほとんど危険はありません。私自身18年住んで目撃したのは一度だけですし。他に危険な動物は、と考えて次に思い起こされるのはキツネでしょうか。エキノコックスという寄生虫を持っていることは最近では多くの方に知られていることと思います。

 しかし、キツネとて敢えて接触しない限りは大丈夫。クマ・キツネよりも実生活上で危険なのは実はエゾジカだったりします。クマのように目撃されただけで駆除の通報がされるでもなく、キツネのようにはしこく人間から逃れることもない。市街地すら自分たちのなわばりであるかのように悠然と群れを成して闊歩するため、交通事故の原因となりやすいのです。何せ幹線道路でも街灯が少ない土地柄のため、日が暮れてからの運転は緊張のし通しです。

 宅地の植え込みを喰い荒らす、なんてのはまだいい方。悪いことにはその大きな体で、しかも群れでマダニを運ぶわけですから静かながら大きな脅威です。今やマダニも人を死に至らしめる害虫として用心しなくてはならないのです。


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◆あの星見つめて何思う

 「で、結局ナニしよん?」というお話になりますと、ごく簡単に表現すれば「オートバイで旅する人向けのキャンプ道具屋」です。正味、町の情勢が経済的に苦しいことは受け止めなくてはならない事実ですが、開業当初よりネット通販に軸足を置くことで「¥という名の外貨を稼ぐ」という心持ちで日々業務にいそしんでおります。

気候や地形の豊かな変化は言わばアウトドア業界の最前線。手前味噌ながら、床の無いテントに折り畳み式ベッドを持ち込むスタイルや、折り畳み式薪ストーブによるテント内暖房を国内でいち早く開発・導入するなど、文字通り開拓者の意気軒昂です。

 果たせるかな、北海道。軽妙洒脱な生活には程遠いわけですが、質実にして剛毅な暮らしを旨に精進しております。そしてふと皆さんが北極星を仰ぎ見るとき、「あの星の下、‘85卒のカネコは歯を食いしばって頑張っとる」と思いを馳せていただけるならそれに勝る感激はありません。

以上、現場から金子でした。

(2018年10月:記)

   
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