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世界で活躍する同窓生からのメッセージ(敬称略)
植田 佳明 (平成18年卒) ドイツ ボン市
私と朝日高校
ボン大学メインキャンパス。昔の宮殿をキャンパスにしています。
第二次世界大戦中にはボンも空爆に遭い、この建物も一部破壊されました。
私の所属する研究所は別の場所にある近代的な建物です。
平成18年卒、植田佳明と申します。全員昭和生まれの最後の学年、朝日高独自入試を受けてない最後の学年、また、旧階段校舎で3年間全てを過ごした最後の学年になります。
さて、私は日本で大学院修士課程を終えた後、2012年4月に渡独し、ドイツ西部に位置するボン大学にて大学院博士課程の学生として植物科学の研究に励む日々を送っています。(図らずもビールの研究が大学院での研究よりはかどっているのは内緒。)
修士課程在籍時代には、朝日高校からの修学旅行生の案内をさせていただいたりもし、高校時代を懐かしく思い出すこともしばしばです。
私が岡北中学校を卒業し朝日高校に入学したのは今から10年前、2003年のことでした。「なんだかすごいところに来てしまったな」という印象を受けたことを覚えています。同級生はみんな優れて見えるし先生は変わった人が多いしチャイムの代わりのサイレンはまるで刑務所のようでした。通学は往復20キロの自転車通でしたが卒業時には皆勤賞をいただきました。この通学路で忍耐力はかなり培われたと思います。
好きだった科目は英語と物理。高校の頃から海外で仕事をするのが夢でした。受験期には点を取るためのテクニックや何のためにやっているのかわからない受験勉強に嫌気が差し、わざと高校で習わない範囲の勉強をしていたこともありました。そんな中、特に物理の平松先生は、高校で習わない範囲の授業をして下さったり、個人的に研究や大学生活についてのお話もして下さったりし、非常に影響を受けさせていただきました。大学の専門課程では物理から生物に方向転換してしまいましたが、研究者としての自分を想像する大きなきっかけとなりました。
<ドイツ紹介>
さて、ドイツについてみなさんどのようなイメージをお持ちでしょうか。
そう、サッカーが強い国です。ビールが水より安い国です。高速道路で200キロとか出す国です。ディズニーランドのお城のモデルになったお城がある国です。では、ボンってどこでしょう。昭和生まれの方には、旧西ドイツの首都として有名でしょうか。ベートーベンの出身地であり、生家も残っています。新渡戸稲造が留学し学んだ場所でもあります。2006年にはサッカー日本代表がドイツワールドカップ開催時に合宿を行いました。日本でもおなじみのグミ「HARIBO」の誕生した地でもあります。そして街の中心部を、あの有名なライン川が流れています。高校の地理の授業で習ったことが日常生活に次々と現れてきます。渡独後一年が経ちますが、日々新しいことの発見です。言語・宗教・思考・食事・慣行・風景などなど。
ボンは非常に国際色豊かな街です。私の所属している研究所も、大学院生の約半数が留学生です。ヨーロッパだけでなく、中東、アフリカ、アジア、南米など、まさに世界各地からの学生が研究に精を出しています。彼らから学ぶことも非常に多く、またドイツに来てから日本という国を客観的に見られるようになりました。日本に留まっているときにはわからなかったことですが、他国の文化や価値観を知ることで、日本文化の特徴や世界における位置づけがわかるようになりました。そしていかに日本という国が特異で素晴らしい国かということにも気づかされました。ちなみに?ボンにはラーメン屋、寿司屋もありますし、毎年アニメコスプレ大会なんぞも開かれております。
夕暮れのケルン大聖堂とライン川。ケルンまではボンから電車で30分ほど。
学生は州内のローカル交通が無料で、ケルンまでもタダで来られます。
なお、学費も年間6万円あまり。学生に優しい国ですね。
毎年(2013年は2月)、ライン地域で行われるカーニバル。
多くの人が仮装し、街全体が最高潮に盛り上がります。
写真はケルン大聖堂の前で。
朝日の仮装行列にも負けていません!(筆者左下)
<研究>
ちゃんと実験もしてますよ、念のため。肝臓だけでなく脳味噌も鍛えております。
植物からRNAを抽出しております。 高校3年時の2005年に参加した、全国高校化学グランプリ
でいただいた白衣をドイツで使用しています。
さて、私の研究についてですが、話をするといつも少し驚かれます。それは、「大気汚染がイネに及ぼす影響」というテーマです。そう、ドイツでイネを育てています。もちろんドイツに田んぼはありません。温室でイネを栽培し、実験室で遺伝子やタンパク質の実験をしています。大雑把には植物生理学という分野になります。イネにおける、大気汚染に対する耐性を決定するのに重要な遺伝子の同定やその機能解析などを行っています。
さて、ところで何故イネなのでしょう。ドイツならジャガイモでは?、と思われるかもしれませんが、イネは世界的に重要な作物であると同時に、ゲノムが解読されており、遺伝子情報を利用した研究には非常に好都合なのです。実際、アジアだけではなくアメリカやヨーロッパを始め、世界中でイネの研究は進められているのです。今年は初めての国際学会発表も経験し、研究者の卵としての自分を実感しつつあります。
<ドイツでソフトテニス?>
ドイツでソフトテニスしています。
第六回ドイツソフトテニスオープンにて。
韓国の選手と対戦しています。
私は高校時代にはソフトテニス部に所属していました。しかし私の在籍中には団体戦で一勝すらできないという非常に悔しい思いをしてきました。その後、大学でも体育会でソフトテニスを続けました。
そして今。ドイツでもソフトテニスを細々と続けています。ソフトテニスは日本発祥ということもあって、ドイツで知名度はほぼゼロ。もちろん身近にソフトテニス経験者はいませんし、ドイツ全体の競技人口も数十人です。時折、ボン近くのコートで友人たちにソフトテニスを紹介したり、フランクフルトにあるドイツチームのメンバーと一緒に練習や試合をしたりする機会があります。微々たる力ではありますが、将来的にソフトテニスの普及や国際化に少しでも貢献できればと思っています。
ドイツにはあと2年ほど滞在する予定です。多くの失敗をする日々がまだまだ続きますが、全てが人生の学びだと思っています。次に岡山朝日の地を踏めることを楽しみにしています。
読んでくださったみなさま、ありがとうございました。
さて、原稿も書き終わって喉も渇いてきたことですし、ビールへと手を伸ばしますか。。。Prost!
近くの丘からボンを見下ろす。中心に見える二つの高いビルの右側は国際連合のドイツオフィス。
中央に流れるのはライン川。右側がケルン、デュッセルドルフ方面、左側がフランクフルト方面。
それにしても良い天気!
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