昭和61年卒業の服部孝典と申します。現在、私は中東の在ヨルダン日本国大使館にて経済・経済協力担当書記官として勤務をしております。
この度は「ワールドリレー」に寄稿の機会を頂きありがとうございます。
ヨルダンは中東の国でもサウジアラビア等と違って産油国ではありませんので、皆様にとっては、必ずしも馴染みある国ではなく、情勢が不安定な中東の国という印象をお持ちかも知れませんが、今回の私の寄稿が皆様のヨルダンへのご理解の一助となれば幸いです(なお、本投稿は個人的見解を述べたものである点を予めお断り致します)。
【1.ヨルダンという国】
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死海 |
ヨルダンの国土は8.9万平方qで日本の約4分の1(北海道と同程度)の大きさです。その8割が沙漠や荒地であり、耕作に適した土地は4%に過ぎません
その一方でヨルダンは、海抜マイナス400mに位置する死海(地球上最も低い場所)、死海に流れ込むヨルダン川流域の農業が盛んなヨルダン渓谷、冬には雪もちらつく高原、そして東側に位置する沙漠など実に変化に富んだ自然を有しています。
私の住んでいる首都のアンマンは標高約800mメートルですので、夏は暑くても湿気は少なく割と過ごしやすいですが、冬はここが中東?という位、夜は冷えますし、一昨年は雪も降りました。雨は過去60年間の平均年間降雨量は、93ミリ(日本の6%以下)に過ぎないので、水不足は常にこの国の抱える大きな問題です。
雨期は冬ですが、一気に降ってしまい、水はけの悪い道路はすぐに一面海のようになってしまいます。
死海に行く際は一気に1,200mメートルの標高を下っていくことになります。途中に海抜ゼロメートル時点を示す箇所があり、ここから先も道路は続いているのに海抜マイナスとなるというのは不思議な気分になります。死海に着くと気温がぐっと上がります。噂通り、本当に簡単に身体が浮いてプカプカできます。
しかし、塩分が相当濃いので長時間は入れず、また体に傷があるとヒリヒリとします。
他方、死海は、そこに流れ込むヨルダン川の水量の減少等により年間1mメートル以上のペースで水位が下がってきているという問題を抱えています。
また、ヨルダンは、映画「インディ・ジョーンズ」にも登場し、「新世界七不思議」の一つに選出されたペトラ遺跡を始めとする歴史遺産の宝庫でもあります。
【2.親日的な国】
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日本庭園 |
ヨルダン人は一般的に穏和な性格で、その宗教や伝統を尊重し、家族の調和、人のもてなし、面子を重んじる点など、日本人と似たメンタリティーも有します。
また、両国がそれぞれ皇室・王室を戴いていることや我が国のこれまでの種々の援助がヨルダン国民に周知されていることなどから、ヨルダン人の日本人に抱くイメージは極めて良好です。
アブドッラー2世国王は王子時代から数えてこれまで10回訪日されています。また、アンマン市には日本庭園もあります。
【3.中東の安定の鍵】
ヨルダンはイスラエル(及びパレスチナ)、イラク、シリア、サウジアラビアと国境を接しており、中東を取り巻く様々な問題の緩衝国家として永く重要な役割を演じてきています。
現在、報道にある通り、シリアからは大量の難民がヨルダン等周辺国に避難してきていますが、ヨルダン政府や国民は、自らの困難な財政事情にも関わらずシリア難民の受入・支援を継続しています。
【4. 最後に】
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ペトラ |
これまで私は全くアラブの世界には縁がありませんでしたが、既に当地に来て1年3ヶ月が過ぎました。特に時間の感覚、イベントの準備の進め方などについては日本人から見ると?という場面には時々遭遇します(むしろ日本人が特殊なのかも知れません。)。
また、早朝から夜まで1日5回、モスクからイスラム教のアザーン(礼拝告知)の声が街中に鳴り響きます。しかし、このアザーンが心地よく感じられるくらいに今ではヨルダンに慣れました(他のアラブの国と違ってアルコール類も概ね問題なく入手できるのも大きい要因かも知れません)。
皆様、機会がありましたら、是非ヨルダンを訪れてみてはいかがでしょうか。
年を取って若い時のように飲めませんが、負けずに張り合っています。アラビア語は話せませんが(しかし、ヨルダンは英語がかなり通じるので大丈夫です)、お酒ではグローバル?にまだまだ勝負ができそうです。(笑)
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