|
凍りついた道路 |
4年前の2009年の3月末、夫の仕事の関係で北海道の釧路市に住まいを移しました。
今まで北海道には足を踏み入れたこともなく、いったいどんな暮らしが待ち受けているのか、不安な気持ちでいっぱいでした。
はたして桜が咲き乱れる東京を発ち、降り立った釧路は道端には雪が残り、時には小雪さえ舞い散る、凍えるような寒さでした。その後4月、5月となっても街は枯葉色のまま。そのうえ北海道は梅雨がないというものの、春から初夏にかけて頻繁に釧路の街は濃い霧に包まれます。カラリと晴れ渡る日はほとんどなく、じめじめした薄暗い毎日に気が滅入る思いでした。
ところがお盆を過ぎたあたりから、一気に爽やかな季節が訪れます。澄み切った青空、ひんやりと心地よい風。道東の秋は、本当に素晴らしいです。この時期になって、やっと釧路の生活を楽しめる余裕が出てきました。 釧路は日本で一番夏が涼しいところで、真夏でもせいぜい25℃くらい、30℃を越えることなど滅多にありません。寝苦しさなどとは無縁で、いつも布団を掛けて朝までぐっすりです。暑さが苦手な方は、夏は釧路で過ごされると身体がとても楽ですよ。 冬は確かに非常に寒いのですが、雪は意外と少なく、春夏と違って晴天続きです。ただ一度雪が降ると、毎日真冬日なので融けることがなく、ツルツルに凍りついて街中がアイススケートリンク状態になります。ひと冬に一度は滑って転び、青あざを作ってしまいました。
|
|
流氷で覆われた釧路川 |
幣舞橋の夕日 |
|
|
釧路は、バリ島、マニラと並び「世界三大夕日」の街として知られています。街の中心を流れる釧路川に架かる幣舞(ぬさまい)橋から見る太平洋に沈む秋の夕日は、息を飲むほどの美しさです。
また真冬になると、マイナス20℃くらいまで冷え込んだ朝にはキラキラと光るダイヤモンドダストが現われたり、釧路川の表面が流氷で覆われたりして、寒さに凍えながらも思わず立ち止まって見入ってしまいます。 釧路市内ですら、たくさんの自然の美しさに触れることができるのですから、少し遠出すればいくらでもミラクルな風景に出会うことができます。道東は見どころ満載の自然の宝庫なんです。
特に私がお勧めしたいのは、世界遺産である知床です。大きな噴火によりできあがったこの半島は高低差が大きく、そのため流れる水が川にならず、美しい滝をたくさん作っています。またそびえ立つ断崖絶壁、木立に覆われた知床五湖など、壮大な自然に圧倒されます。近年では観光に適した設備も整えられ、非常に快適に名所を巡ることができます。さらにその道中ではエゾシカやキタキツネがひょっこりと現われ、心を和ませてくれます。
|
|
初秋のオンネトー |
知床のエゾシカ |
|
|
|
神の子池 |
|
道東では他にも、摩周湖、阿寒湖、屈斜路湖、オンネトーなど、いろいろな表情を持った美しい湖があります。私が気に入っているのは「神の子池」という摩周湖の伏流水でできたごく小さな湖で、まるでその上で妖精が舞っているかのような幻想的な雰囲気をたたえています。また塘路湖から釧路川にかけてカヌーで下り、川面の目線で釧路湿原の風景を楽しむなどというアクティブな観光もできます。
こういった湖の周辺には、優れた泉質の温泉がたくさんあります。地元の人にとっても、ちょっと遠出して日帰り入浴をして帰るというのは、日頃の楽しみとなっています。
|
和商市場 |
|
そして外せないのが、何といっても食材の素晴らしさ。釧路市民の台所、和商市場は新鮮な魚介類にあふれています。カニはタラバ、ズワイ、毛ガニ、花咲ガニと一年中味わえるし、脂の乗った時ザケ、ピチピチのサンマ、巨大なホタテやホッキ、ツブなどの貝類、ホッケやニシンの干物etc… 枚挙に暇がありません。もちろん海のものばかりでなく、トウモロコシ、アスパラガス、ジャガイモ、メロン… 本場のものはひと味違います。
また北海道の人というのは、外から入ってきた人間に対して非常に親切です。これは昔からの「開拓者精神」が根強く残っているからだと言われます。このことは本当に実感することが多く、釧路に親戚も友人もいない私が何とかやってこられたのも、北海道のこうした気質に助けられた部分が大いにあります。
|
釧路の街 |
このように釧路はとても魅力的な土地なのですが、残念ながら財政的には現在大変厳しい状況です。元々炭鉱と漁業で栄えていた街なので、その衰退ぶりは大きく、以前にはあったデパートも撤退し、駅前の大通りの半分以上はシャッターが下りています。生活保護受給者は約18人に1人という、危機的な状況です。
ですから、ぜひ多くの観光客に訪れていただいて、釧路の街を盛り上げてもらえたらと思います。
最後に、釧路に来てから初めて知ったのですが、岡山市と釧路市は後楽園のタンチョウに関わることで友好関係を結んでいます。夏祭りには岡山市のブースがあり、岡山のお菓子や地酒が並べられています。そういったゆかりのある街釧路、また道東へ皆様ぜひ一度足をお運びください。ここにしかない自然を味わうことができますよ。
|