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国内で活躍する同窓生(敬称略)
磯本 馨 (昭和 54年卒)    東京都在住

アルカディア号からジェットエンジン、そしてエネルギーの世界へ

 H21年10月に行われた京浜同窓会は 京浜同窓会創立55周年と会報第30号記念という節目の回を迎え S53卒幹事の方々の並々ならぬご尽力のおかげで大盛況に終わりました。 その会場で校史資料に見覚えのある運動会仮装行列の出し物が紹介されているのを見たのがきっかけで、寄稿させて頂くことになりました。 私の仮装行列についての思い出を中心に、「その後」の一端を紹介させて頂きたいと思います。

写真1 アルカディア号 (プラモデル:2代目)

1. アルカディア号

 私達は、国公立大学入試の大きな変革である、「共通一次試験」を初めて受験した年代です。 それまでの一期校、二期校の仕組みから大きく変わるため、先生方も親達も、もちろん我々も、不安をかかえて ちょっとピリピリした感じでした。

 その一方で朝日校ならではの「反骨(発)精神」(?)からか、運動会の仮装行列にかける意気込みは衰えるどころか、むしろ増したように思われます。 

 出し物の大きさは、高さ4m、長さ10m以内とするように「お達し」があったにもかかわらず、D組のマジンガーZは高さ7〜8m、I組のスター・デストロイアー(スターウォーズ)は全長約15mと まったくの無視。 一方、わがF組は真面目に(?)規則は守って全長はぴったり10m。精巧さで勝負です。 この理科系3クラス、それぞれの「特徴」を張り合っていました。

 我々のテーマは、当時 正に、宇宙戦艦ヤマトを始めとして開花し始めたSFアニメ、松本零士原作の「宇宙海賊キャプテン・ハーロック」です。

 製作した出し物は (1) ハーロックが乗る宇宙戦艦 アルカディア号<写真1,2> (2) ハーロックの敵(なぜか全員女性)の女王ラフレシアが乗る宇宙母船<写真3> (3) 宇宙ファイター<写真4> (4) ちょっと危険な「過激派」の宇宙船(?)<写真5> の4つです。

写真2 完成したアルカディア号の雄姿 写真3 敵の女王ラフレシアと宇宙母船
写真4  宇宙ファイター 写真5 過激派も宇宙へ(?)

 寄稿にあたり、30年前の写真をあらためて眺めて見ると 女子(理科系クラスゆえ47人中9人)が活躍してくれているのが印象的です<写真6,7,8>。 出し物の製作はもちろん、徹夜明けの男子への差し入れまで、いろいろ気を配ってくれました。

写真6 女子も活躍  夜だけど大丈夫? 写真7 台風による被害を復旧中。
苦戦が予想された前部に
注力しすぎて 後部が遅れ気味
写真8 発泡スチロールの箱で艦橋を製作


● アルカディア号の内部を覗いてみると

 本体の複雑な形状(特に艦首)<写真1>をどのような構造で実現するかについては、プラモデルを前にして、有志の間でいろいろ議論しましたが妙案が出ず、結局は正攻法でゆくことにしました。

 大まかな骨格を木材で箱状に組み、その外側に板でリブをたてて複雑な凹凸を表現し、そのリブを細く薄い板や竹で結んで、その上に新聞紙を貼って 形を作り出すという正に模型飛行機の構造です(私の幼少よりの飛行機好きが役立った数少ない例!)。

 内側から前方を見た写真<写真9>では、艦首の先細りの形状をどのようにして作り出しているかが良くわかると思います。 一枚のベニヤ板を「輪切りにした玉ねぎをばらす」ように切り抜いてリブを作成しています。

 後方を見た写真<写真10>で 奥に見える白い球体はサプライズ用(後述)の熱気球。その右側には万一に備え、なんと消火器が設置されています。 消火器搭載の出し物も珍しいのでは?

 ちなみに、参考用に作成したプラモデルは、現場でそれそれの担当する部位が次々にもぎ取られてゆき、最後は朝日校の土と帰しました。 <写真1>は運動会後に作成した2代目です。

写真9 アルカディア号内部(前方を見る) 写真10 アルカディア号内部(後方を見る)
中央の白いものはサプライズ用の熱気球
右奥にはなんと消火器を装備!

 

写真11 熱気球の試験飛行首尾は上々

● 完成を目前にして台風に遭遇

 正に心血を注いで 完成まであと一歩となったところで 運悪く台風に見舞われてしまいました。 前日、帰る前にシートをかけて養生はしたものの、夜に暴風雨となり、翌朝 登校してみると、新聞紙を張って作った船体は見るも無残な姿に。

 明後日に本番をひかえて、もう間に合わないと意気消沈していたところ、誰かが小躍りしながらやって来て、「今日は一日 授業無しにして 復旧に当ててくれるんじゃと!」。 そのおかげで なんとか本番に間に合わせることができました。

 もし、あの時の先生方の計らいがなければ 悲惨な状況で本番を迎え、仮装行列の思い出は今とはまったく違ったものになっていたでしょう。 先生方の大英断に今でもほんとうに感謝です。 
  
● 不発に終わった サプライズの熱気球、そしてリベンジ

 かなり早い段階から 何かサプライズを企画しようということになり、話しあいの結果 演技の最後に、アルカディア号後部の四角い居住区から熱気球を上げることになりました。 居住区に収まる球の大きさを決め、それに内接する正二十面体の一辺の長さを女子が計算(さすが理科系!)、試験飛行も上々の出来<写真11>で、成功は間違いなし!。

 本番の演技<写真12,13,14,15>では 「その時」に向け、船尾居住区で 人知れず4人が汗だくになって気球内側をバーナーで熱していました。 そして正に「その時」、あろうことに 居住区の四隅につけたランタンに引っ掛かって上がらず不発に終わってしまったのです。 つめが甘かった!

 その悔しい思いは、卒業式の日に晴らすことになります。 卒業式終了後、 校庭で皆が見守る中 「3年F組 祝卒業」と書かれた熱気球は「熱い思い」とともに 見事舞い上がりました<写真16,17>

 その他、ラフレシアの母船<写真3>担当の2人が 旭川の河原で 釣り用のアセチレン灯を焚きながら夜間に製作していたところ、警官に職務質問された・・・など、思い出話はつきません。
 

写真12  興奮した小学生が乱入 写真13 ラフレシアがアルカディア号を攻撃
写真14 「まゆ」ちゃんがほしいと花いちもんめ
(注)「まゆ」は、ハーロックが命をかけて守る友人の娘(赤い服)
写真15  演技が終わって帰還 残念ながら熱気球は不発!

 

写真16  卒業式の日のリベンジ
やった! 浮き上がった!
写真17  熱気球は教育センターの建物へ
気球には「卒」の文字



2. ジェットエンジン

 子供のころから飛行機が好きで、その関係の仕事につくのが夢でもあったため、大学では工学部の機械科に進み、ジェットエンジンを扱っているメーカーに就職しました。 ちょうど、5カ国で共同開発しているエンジンがあり、運良く希望がかなって その部門に配属されました。 開発が完了するまで約8年間 そのエンジンに携わることになります。

写真18 携わったエンジンとともに

 <写真18>は、たまたま そのエンジンが搭載された機体に乗る機会があったとき、地上のクルーの方に撮って頂いたものです。 人を乗せて飛ぶ機械を扱うことの責任の重さや、激しい性能競争の中でわずか0.1%燃費を向上させることがいかに大変であるかを身をもって感じることができました。

 まったくの余談ですが、この8年の間には ちょうど 今 スペースステーションに長期滞在している野口宇宙飛行士と同じグループで背中合わせの席だったこともありました。 昼休みにはよく一緒にフリスビーをやったものです。 


3. エネルギーの世界へ

 幸運にも子供のころからの夢がかなって携わることができたジェットエンジンの仕事ですが、不思議なもので しだいに エネルギー・環境問題に強い関心を抱くようになり、希望して、ガスタービン・コージェネレーションの部門に移りました。

 「ガスタービン・コージェネレーション」とは、ジェットエンジン(に近いもの)を地上で発電に使用し、その排気ガスの熱も有効利用することで省エネルギーに貢献するシステムです。

 ジェットエンジンに携わっている頃は、直接 お客様(機体メーカーではなく、エアラインがお客様)と接する機会がありませんでしたが、新しい部門では、正に化学関連、電機関連、自動車関連、製薬関連・・・と幅広いお客様と接する機会を得たのが一番の収穫でした。

 私が担当していた機種は、1台で一般家庭約3000世帯分の電力を供給できるもので、平成15年にはそのシステム6台を東京の六本木ヒルズに設置させて頂きました。 そのシステムはヒルズ内の電力をまかなうとともに、冷暖房のエネルギー源となっており、災害でライフラインが途絶えても六本木ヒルズの街は生き残ることができます。

 最後に エネルギーの仕事に約10年間かかわってきた者として一言。現在の日本は、私が生まれた1960年の約5倍のエネルギーを消費しています。 一方で私達は当時の5倍 幸福かと問われると、どうでしょう? 採掘技術の進歩で、化石燃料の可採可能年数はここしばらく、伸びる方向かもしれません(特に天然ガス)。 しかしそれは 次世代へ蓄えを残すと同時にCO2の排出を抑える「術」を現代の我々が考え、準備する「猶予」を与えられているに過ぎないと考えています。

 化石燃料がまだあるから(安いから)使うのではなく、再生可能エネルギーを上手に利用してゆくと同時に、人類全体が「足るを知って」エネルギー消費を抑えてゆく必要があると思います。 そのために、まずは先進国である日本がお手本を示そうではありませんか、次世代のために。

 とりとめのないお話ばかりで恐縮です。 仮装行列にのめりこんだ一卒業生の当時とその後のご紹介まで。
 

※アニメに基づいて製作された出し物の写真は、東映アニメーション鰍フ許諾を得て掲載しています。
   
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