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世界で活躍する同窓生からのメッセージ(敬称略)
山崎郁子  (平成元年卒) フランス トゥールーズ

 

音楽のあふれる、バラ色の街、トゥールーズより

2008年夏、パリを訪れた時、私と娘

 卒業の年に年号が変わるという、まれな出来事のある年に卒業しました。だから、卒業して何年か分かりやすいだろう、と思いになられるでしょう。
 でも、海外で暮らしているため、年号がピンと来なくなっていて、すでに浦島太郎状態です。

 「バラ色の街」と呼ばれる、南仏のトゥールーズをご存知ですか?街の多くの建物が、ガロンヌ河の堆積土から作られる赤いレンガで造られているため、そう呼ばれます。
 フランス第4の都市で、郊外の住宅街と合わせると、かなり大きいのです。それでも、街の中心は、徒歩で周れるほど、こじんまりしたものです。そこに住むようになって、12年が経とうとしています。

 渡仏前は、東京でシルバーアクセサリーのデザイナーとして働いていました。フランスはファッション業界で働く私にとって、憧れの国。
加えて、フランス映画や、アール・ヌーヴォー、トゥールーズ・ロートレックが大好きで・・・・と、いつも私の興味はフランスに傾いていました。 
 思い切って、やってきたものの、初めは、言葉もままならず、文字通り大変なものでした。

 こちらで、フランス人の主人と知り合い、2人の子供がいます。
 今でこそ、一人前に暮らしていますが、失業率の高いこの国で、外国人であっても、正規社員として職を得て、こうやって落ち着くまでは、山あり谷ありの毎日でした。暗いトンネルの中を走っている期間が、とても長かったです。
 「おふらんすに暮らす優雅なマダム」には、程遠い私です。

クリスマス、市役所前で私の家族

 フランスは人種の坩堝、とよくいいます。南に位置するトゥールーズは、マルセイユと同じくらい、北アフリカからの移民者が多い街です。 エアバスを初めとする航空産業が盛んなので、それに関する外国人エンジニアや、外国人学生も多いのですが、ヨーロッパ各国、アラブ系はもちろん、アジア系、インド系もよく見かけます。

 ベッドタウンの新興住宅地に行くと、その割合は低いようです。私は街の中心に近い所に住んでいるので、子供たちのクラスメイト達もバラエティに、富んでいます。

 小学校はもちろん、幼稚園から、地球人として、色々な国の文化に触れ、学んでいます。最初は、幼稚園からこんなことも学ぶのか、と、びっくりしたものです。でも、クラスに生まれの違う子供たちがいるのだから、子供たちもすんなり受け入れます。

 働く女性が多いので、幼稚園も3歳を過ぎると義務教育。
 そうは言っても、近くにほかの家族がいないと、仕事と家庭とのやりくりが難しいものです。私達は、私の両親はもちろんのこと、義理の両親も離れた所に住んでいるので、自分達で何とかしなければなりません。

 日本人からは羨ましがられる長期バカンスですが、それも曲者です。誰に子供たちを預かってもらうかなど、共働きの場合、どうオーガナイズするかがいつも問題です。治安が悪い、というわけではないですが、小学生低学年の子供を、長時間、一人で留守番させることはまずありません。

 授業は、8時半から夕方の4時半頃までと、小学生も幼稚園も、長い拘束時間です。 バカンスが日本に比べて多い分、平日は集中して小さな子供たちも勉強しています。その分、小さいうちは習い事をしている人が少ないですね。習い事が盛んな日本と比べると、ずいぶん違います。

主人の祖父母宅。トゥールーズから 90km
離れた過疎化の進む小さな村にありました。

義理の両親の住む、プロヴァンスにある大き
な泉から流れ出る川の前で。大雨の後だった
ので、水かさと水流の勢いが増しています。


路上広告に展示された娘の絵と本人

 小学校に入ると、かなりの子供たちが、スポーツや音楽など、学校外で習っています。小学3年生の息子は、去年までは柔道をしていましたが、今年からはバイオリンを習っています。本人たっての希望で始めたものですが、息子がそれをしたい、と言って来た時は、正直、戸惑いました。

 バイオリンなんて、私も主人も全く知らないし、レッスン料だって高いと聞くし・・・・。そのきっかけは、校外学習。クラシックコンサートが優先的に行なわれるホールが近所にあるということで、幼稚園でも、小学校でも、年に1回は、そこで本物のオーケストラに触れるのです。

 こちらの学校では、子供たちの素直さを生かして、映画、美術、クラシック音楽などの芸術鑑賞にも、とても積極的です。

 五線とオタマジャクシは万国共通なので、「音楽」はどこにいても楽しめるものです。でも、こちらに暮らしていると、音楽好きにとってはたまらないイベントがいくつかあります。

 最たるものが、毎年、夏至の日に行なわれる、国を挙げての「音楽祭」。
 コンサートホールや、広場、公園内にあるキオスク(野外音楽堂)はもちろん、普段は生演奏のバンドを置かないレストランや、カフェバーにも、その日は音楽隊が登場するのです。

 プロも、アマチュアも、どこで演奏してもOK。そして、その周りには、音楽に釣られて人だかりができるのです。好きなジャンルを演奏してるバンドはないか、探しながら、ぶらぶらと歩いて周るのが楽しいのです。ロックンロール、サルサ、ジャズ、アフリカン、テクノ、クラシック・・・・と、色々。この世に音楽さえあれば、みんな幸せ、と思えるくらい、行き交う人みな、楽しそうなのです。

 我が家は、まだ子供たちが小さいので、夕食後、家を出て、日の沈む夜の10時半ぐらいには戻りますが、路上では夜中まで演奏は続きます。私は、毎年、その日を楽しみにしています。

 数年前から、行きたいと願っていたピアノコンサート、今年初めて、家族4人で行ってきました。
 毎年、9月に開催されているピアノ・フェスティバルなのですが、一般のコンサートホールではなく、教会の回廊を利用して行なわれます。 街のど真ん中にあるにもかかわらず、教会の中はもちろん、回廊に立つと、街の喧騒から、ほぼ完全に解き放たれます。素晴らしい彫刻の彫られた,回廊の柱を眺めながら、そこに響き渡るピアノの音色に耳を傾けるのです。

 こういうコンサートは大人のものなので、10歳以下の小さい子供は、300人の観客の内、数えるほどしかいませんでした。でも、私の子供たちも含め、それなりに感じるものがあって、その子たちも聴き入っていたようです。室内ではないので、後半、寒くてたまりませんでしたが、感動のソワレでした。
 そのほか、教会のオルガンのコンサートや、ジャズのフェスティバルなど、年中通して音楽がとても身近です。

教会の回廊で行なわれるピアノコンサート 音楽祭、路上演奏の様子 音楽祭、市役所前の広場で行な
われるコンサートに集う観客

 充実した毎日ですが、3年も帰省しないと、さすがに日本が恋しくなります。
 秋になると、中心街にあるウィルソン広場の、一本の大きなイチョウの木に実がなります。
 こちらの人たちは銀杏を食さないので、ひたすら迷惑そうに、落ちたやわらかい実と、その臭いを避けるかのように、通り過ぎます。
それを見る度に、高校時代を思い出します。立派な桜の木や、巨大な楠木・・・・。広大な敷地に、素晴らしい自然。今、振り返ると、なんて贅沢な環境の中で勉強していたんだろう、と思います。

 祖父も一中の出身で、姉も朝日だったので、何のためらいもなく入学した朝日。個性的な先生方に恵まれて、私の場合、試験の結果には反映されなくても、授業は楽しかったのです。冬は寒くて凍えていた、あの階段校舎。その解体中の写真を拝見しましたが、胸が痛みます。
 そんな、大事な3年間をともに過ごした、同級生のみんなはどうしているのかな、と、某SNSで探したりしますが、なかなか再会できません。 30代後半、仕事も子育ても忙しいとき、お互いに励ましあえたら、と思います。

 南仏にいらっしゃる方、同窓生の方のご一報お待ちしています。


山崎郁子          
ikukojacquet@gmail.com


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