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国内で活躍する同窓生(敬称略)
多田 千香子 (平成元年卒)  京都市中京区在住

全国紙記者→フランス留学→「おやつ記者」に

「パリ砂糖漬けの日々」出版記念展で
ルネスホール・公文庫カフェ 2007年11月

 朝日高校生だったのは20年前になります。に、にじゅうねん…。突っ伏しそうになりました。思えば遠くに来たような、何も変わっていないような…。 

 高校には播州赤穂線で40分ほどかけて通いました。岡山駅で定期券を出すのが誇らしく、ものすごく大人になった気がしました。

 数学は苦手で英語は好き。優秀な同級生だらけで成績はパッとしませんでした。ESS所属と称していましたがほとんど休眠状態でした。それでも英語指導助手の先生にインタビューして小冊子を発行したのを覚えています。

 タウン情報誌に投稿したりもしました。いま思えばメディアで発信する面白さに気付きかけたころだったのかもしれません。もっとも小論文となるとてんでダメで、模試は10点とか15点(もちろん100点満点)でしたが。

 ちょうど共通一次試験のころに昭和から平成になり、自粛ムードのなかでの受験でした。「キョーイチも延期にならんかなぁ」。意味不明な期待をしたのを思い出します。あぁ恥ずかしい。布団をかぶって突っ伏したくなります。あまりに幼く、無知であることに気付いていないお間抜けでした。

読者を訪ねて旅した独バイエルンのビアホールで 2008年6月

 大学時代まで岡山で過ごしました。就職活動はバブルがはじけたころ。朝日新聞社に記者として採用されました。

 紙切れ1枚で告げられた初任地は「新潟」でした。サツ回りや高校野球、行政なども担当しました。記録にも記憶にも残るダメ記者だったように思います。火事現場に駆けつけてフィルム(当時はデジカメなどありません)を忘れ、Y紙記者にめぐんでもらったこともあります。

 休日に美容院に行っていたら県警キャップから「強盗だ。行け」。ちょうどシャンプー中でした。ビショビショ頭を振り乱して現場のスーパーに駆けつけ、警察官に驚かれました。

 広島や大阪、福岡と転勤して12年余り勤めました。落ちこぼれなりにザ・会社人間、休みだって大事件があれば会社に駆けつけました。ニュースを追いかける高揚感にとりつかれ、夢中で過ごしてきました。

 新聞記者を卒業?中退?したのは34歳です。おやつを作って書く人になる。大ミエを切って12年余り勤めた会社からジャンプしました。フランス語は「ボンジュール」が言えた程度でしたが、お菓子を学ぼうと単身、パリへ。料理学校でマカロンからアメ細工まで100種類以上を学びました。夜は語学学校に通い、世界中からの留学生と机を並べました。もっとも学校よりもパリという街や人から学んだことのほうが、うんと多いのですが…。

東京マラソン(ただし10キロの部)を完走
応援に来てくれた「おやつ仲間」と
2009年3月

 コレ見て!と宝石のように輝くフランス菓子を習いはしたものの結局、私の心をとらえたのはサブレやマドレーヌといった素朴な「おやつ」でした。年月をへた味わいを放つ街、古いものをいつくしむフランス人の暮らしにも心ひかれました。日本でだって、できるはず。ならば京都に住もう。そう決めて帰国しました。何のアテもありませんでしたが。

 なんでも口に出していればマコトになる気がします。縁あって二条城近くの下町にある築70年の長屋を借りることができました。「おやつ新報」と名付けたアトリエを開いたのは2年前です。だれかの顔を思い浮かべながら作った「おやつ」って、どんな有名な菓子職人の作品より胸を打つはず…。そんな思いから「おやつ新報」は「おやつ信奉=しんぽう=」との掛け言葉になっています。

 アトリエを開いたのとほぼ同じころ、エッセー「パリ砂糖漬けの日々」(文藝春秋)を出版しました。ルネスホールで出版記念の写真展をしたら、朝日高校の同級生だったササコからメールが来て、京都の長屋までやってきてくれました。18年ぶりの再会です。昔の友人って不思議なものですね、スーッと高校時代に戻れるのですね。「うわー、変わってねーなー」。感激しながら岡山弁で話し込みました。 

アトリエで開いた「1日トリュフ食堂」 2009年2月

 小さな長屋が人と人を結ぶ場所になれたなら。そんな思いから「粉遊びの会」として焼き菓子を作る会や、「1日食堂」と題する食事会を開いたりしています(どうぞいらしてくださいませ!)

 待つだけではなく、あちこち旅して素敵な人やおやつと出会いたい。こんなんで大丈夫かと思いつつ、スケジュール帳は旅だらけです。フランスの民宿でタルトを習い、インドの家庭でカレーを教わり、香港では1日お菓子教室を開く話も舞い込んでいます。

 我ながら「よい子はマネしないでください」と言いたくなる人生です。人生があと2回やれるならば、まだ会社にいたかもしれません。それでもあたたかいご縁の数々、記者時代にはありえませんでした。本当に宝物です。出会いが結び目となって別の縁をつむぎ、私自身の言葉の糸もどんどん強くなっていく。そう信じて2冊目、3冊目と出版する夢を追いかけています。ぜひ応援してくださったらうれしいです。


拙著「パリ砂糖漬けの日々」(文藝春秋)
どうぞお読みください!

 

多田千香子
ただちかこ 1970年、岡山県備前市生まれ。岡山朝日高校、岡山大学法学部卒。1993年、朝日新聞社に入社。記者・編集者として12年余り勤めたあと渡仏。パリのル・コルドン・ブルー料理学校製菓上級課程修了。2007年より京都在住。アトリエ「おやつ新報」主宰。著書に「パリ砂糖漬けの日々」(文藝春秋)。
 「おやつ新報」ウェブ
 asahi.comコラム「論より、おやつ。」
 JA広報サイト「だんだんたんぼ」コラム「サリュ!農家民宿」

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