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国内で活躍する同窓生(敬称略)
天野 久世(昭和29年卒) 熊本県熊本市在住

あれから、そしてこれからの私

  最近の私

 第一章 ユニークなわたしの海外体験の一端

 私は、以前29卒同期会誌に ”生かされる不思議“と題して自分を紹介したことがあります。私の人生の転換点から今日に至るまでの経験を振り返ってみると、その当時の一人の日本人としては大変ユニークであったと思います。

 アイオワの風景

 1966年のアメリカはベトナム戦争のまっただなかでした。夫の故郷中西部アイオワ州北部の小さな町の周辺は、古き良き時代がそのまま生きづいている広大な世界穀倉地帯だった。丘の多い北東部に、かつてドボルザークが”新世界”を作曲した美しい丘に立つ教会、ドイツから来た古い伝統に生きるアーミッシュの姿、ミネソタの湖の夏の別荘、New Yorkに移動して学園紛争と黒人の市民権運動、キング牧師を偲んで行進したセントラルパーク。丁度世界貿易センターの基礎工事の頃、Wall streetにある日本の銀行で働いていた、その年の10月故郷の町は、”竜巻“の襲来で、義母は全てを失った。その惨状は想像を絶する。彼女の聖書は巻き上げられて隣の州に落ちていた。

  ミネソタの家の湖の夕焼け

 連れ合いの学びは終了し、博士号取得の論文のため、ボストンへ移動。ハーバード大学の図書館に資料集めのため、私はタイピストとして毎日でかけた。その後の計画は、二人とも未経験の国、当時1970年いつ果てるとも知れない共産主義国のお手本のような国、ブルガリアの首都ソフィアへ。

  ソフィアのアパートの周辺

フルブライト交換教授の資格で民間人としてのアメリカ人家族は私たちだけ。007の物語そのものの世界、周りに注意の上注意して過ごす日々。本当に人々は不自由な、食料もままならぬ生活、その時覚えた味、ブルガリヤヨーグルト、フェタチーズそして、中近東の美味、隣国ギリシャへ買い物に出かけられる特権、それ以上に訪ねたかった聖書の地名に私は興奮した。6月ソフィアを出発、北欧にルーツを持つ義母の夢実現のため、ミュンヘンで母と合流、2歳の長男と4人の北欧40日間の旅が始まった。
当時日本人で、フィヨルドの世界を車と、フェリーを乗り継いで移動した人がいただろうか。白夜の美しい自然は、かつて飢饉の襲来で 大変過酷であったとか。馬鈴薯さえ取れなくなった土地をはなれ、1850年頃多くの人が新天地アメリカを目指して出発した。

  ノールウェイの旅

 義母は、70歳にして、自分の母の故郷を見た。彼女は、ミネソタの小さな町に生まれた最初の白人の赤子だった。北極圏にはいるとそれまでの景色は一変した。フィンランドの国境に沿って、内陸部に入る。その景色は、北欧の人が移住したミネソタの景色と酷似していた、ひとは、故郷を新世界にもとめたのであろう。東欧での2年間は貴重な経験となった。それだけに1989年のベルリンの壁崩壊の出来事は大変な衝撃だった。当時の現状からあの様に早く、もろく社会主義国家が次々と崩れ去るとは想像だにしなかったからだ。今ではそのブルガリヤから、ヨーグルト、それに加えて相撲取りの出現とは、長生きしているといろいろの結末を実感できて面白い。
そして次なる彼の夢は、日本の国立大学で未来の英語教師を育てたいという目標だった。そこで1972年夏、熊本大学に赴任することになり帰国した。
こうした日々、私を終始悩ませ、それでも支えたのは、微弱な英語力であった。
私が現在も英語を教え続けている理由は、実は次の章の助けによるものです。

第二章 会話にならない英語教育の謎

 皆様、今日本で明治の開国以来の大きな問題があるのをご存知でしょうか。
今最も深刻な教育の問題、将来の日本の難問は何か、それは“英語”です。

 日本を出国した途端に英語を求められ、いいえ、国内にいても英語の能力が問われる昨今、日本国民の多くが直面している大問題です。人は自責の念を込めて「私は、読めるけど、喋れない。中学校から始まった10年間の英語教育、あれは何であったのか」と、それは、黙読と音読(話す)の誤解でした。

 文部省、教育関係者をはじめ、子供に最善の英語教育をとあわてる親たちは、母国語である日本語をさしおいても英語だと、自分達が克服できなかったジレンマと戦うかのように、初等英語教育に必死になって奔走しています。

 私たちの周りには、それを利用して、多くの教材が書店に、ラジオ、テレビ等、新聞の半面広告で呼びかける会社、考えてみると私が知る限りでも、ここ2,30年になるでしょう。それでもなお不発という結果の意味は・・・

 最近こんな本がブームになりました。「声に出して読む日本語」、黙読でなく、日本語の音読についてです。私は、ここに「声に出して読む英語」について、書きたいと思います。英語は黙読できるといいますが、文を音読できるかどうか、日本の英語教育の大きな問題点がそこにある様です。日本語では強調されない英語独特の強弱、長短、音の上下の存在を初期段階で明確に教えることです。

 Dr. Paul Griesyは1955年に京都の同志社大学の高校で、はじめて教鞭をとった時、授業中に習っていない単語の発音に躊躇している生徒達を、とても不思議に思ったといいます。意味はどうでもいいから単語を読むことはできるであろうと。実はその時日本の英語教育の盲点に気付き、その後帰国し大学院で学び30年後に生まれたのが、これから紹介するSound Spelling Harmony”
(発音と綴り字の調和)SSHと呼ばれるものです。1972年再来日、熊本大学教育学部、英語科(将来の英語教師養成)在任中に完成した著作です。従来の日本人対象だけでなく、発音に関する基礎英語教材には見られない万国共通の教材です。これは英語を母国語とする人にも大変有効です。(http://www.sshenglish.com/ 参照)

  6年生のクラス

 26文字のアルファベットがどのように、発音と綴り字の関係をつくりだしているのか、つまり英語の発音のルーツを教えるのです。多くの人は英語の綴りは暗記するしかないといいますが、そこには93%以上のルール(規則)があります。それは、26文字を良く知ることからはじまります。そして作者はこの理論を中1の教科書に入る前に学ぶ、英語の発音入門書として作成しました。 

 私自身は、SSHの理論を小学校5,6年生の2年間で教え、中3までの教科書を指導します。最初私は、1980年に中学終了後に渡米予定の二人の娘に教えるのが目的で教室を開きましたが、その後継続し今日に至っています。

ここで、その内容の一部として、母音“a”について説明してみましょう。“a” の文字(例1音節、2音節の語)は、前後の文字によって各々異なった発音をします。

hat  hate  hail  hair  Mae  salt  America  war  car  Warsaw  water
what  heat  hear  boat  boar  spa  grammar  spare  message  
歯形で舌と口の形を習う子供たち

 中学へ進学する前の段階の6年生が、SSHを習得することでこれを読み分ける事が出来るのです。暗記ではありません。初期の土台であるalphabetの発音の訓練の後、英語を母国語とする人のように音読していきます。このルールは他の母音にも適用されます。文法は基本的な読み方が習得されてから始めます。

 例えば、教科書の最初に出る英文を例にとって、考えてみましょう。
“My name is Mike.” ABC・・Zを覚えたばかりの中1の生徒にこの文を読ませるのは大変だと、なぜ教師は疑問を持たないのでしょうか。英語は、日本語の様にひらがなを学べばすぐ読める言語とは違います。しかしSSHのルールを学ぶことで、カタカナをつかわないで、綴りをそのまま英語で読むことができるのです。Myがどうしてマイなのですか?Nameがどうしてナメでなくネームなのか。Mikeもどうしてミケでなく、マイクなのか等。ローマ字では読めない事を知ります。ローマ字は日本語の読みであり、英語の音読の助けにはなりません。例えば日本語の文字が読めない人に、その意味は何ですかと問うのは無理であると同様に、英語の音読を学んでいない人に、この英語の意味はと尋ねても、答えを期待することは不可能です。

 中一の生徒が、英語という新しい学科に大きな興味と期待をもって臨むには余りにも、悲しい現実が初日からはじまり、その後延々とその形式が続いていくのです。このようにいつまでも音読できない英語教育が、現在も続けられています。小学校で英語らしきものをはじめても、日本人の英語教育の問題点を知らない多くの外国人が来日して英語を教えても、解決の道筋は見えません。
SSH教材一式

 結論として、教師が真剣に基礎の基礎であるSSHの方法を習得すれば、それを学んだ生徒が、驚くほど自然に英語の発音ができるようになり、そしてNativeのように音読が出来、音読ができれば、聞くことが出来、そして話すことができるのです。今リスニング英語が強調されますが、幾度聞いても、自分の口で発音の出来ない音は、聞き取ることが出来ません。どんなに時間を費やしても物まね英語から脱却するのは無理です。これが日本の英語教育の現状です。まず、どのようにして発音の仕方を真剣に教える訓練ができるかということが、今の英語教師に求められています。役立たない語学教育は、教育ではありません。
「声に出して読む英語」Read, Speak, Listen NO MORE 物まねオオム

(掲載写真のうち「ソフィアのアパート周辺」は井上博計氏、
「ノールウェイの旅」はAurelian Bria氏の承諾を得てお借りしたものです。)




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