● 北から南から ●

全国で活躍する同窓生からのメッセージ(敬称略)

間野 糸子(昭和46年卒) 福岡県久留米市在住
 私が結婚して久留米に来て24年余りになります。福岡は東京からは遠くなるけれど、FM福岡があり、海外アーティストの公演があるところ。夢ふくらませてやってきました。が、コンクリートの壁の中ではチュ−ナ−は役に立たずベランダでラジカセで聞かねばならず、コンサートも子どもが生まれるまでのことでした。なんのことはない、実家に帰った時に子どもを母に預けて岡山でコンサートに行っていたのです。今は随分自由になりましたけれど。

 結婚当初は岡山の人間と違うそのあけっぴろげで暖かい人柄に接して、海(関門海峡)を越えてやって来たんだなあと思ったものです。ずっと後に、福岡城の黒田のお殿様は備前の福岡から博多にやって来たのだと知りました。知ってましたか? ならば岡山人なのか、いいえ、福岡の人より博多の人の方がずっと多いようです。久留米は博多とはまた少し違います。言葉も違います。博多弁でなくて筑後弁ですから。九州は封建的な風土が色濃く残るところですが、久留米の、それも中心部はさすが商人の町、合理的で進歩的。小学校のPTA活動もどんどん新しいやり方を取り入れて、けっこう画期的な活動をしていましたから、楽しく、暮らしやすいところでした。そんな中で、やはり岡山人の夫は筑後弁でも岡山弁でもない怪しい言葉を操り、私はとうとうポロッと出てしまうようになった筑後弁に詰まりながら、標準語の仮面をかぶった岡山弁をしゃべりょうるんじゃが。

 三人の息子達は大学生と高校生になりました。それぞれが勝手に大きくなったという感じもしています。その間、私は広報委員長なんかしながら友人を増やしていきました。そして出会ったのが映画『ガイアシンフォニー第1番』。丁度10年前、長男が中1、三男が小2の時でした。

 地球は一個の生命体であることを体験したアポロ9号の乗組員だったラッセル・シュワイカート、酸素ボンベも無線機も持たずにたったひとりで山に登る登山家ラインホルト・メスナー、『神とは高度なメカニズムの実体のことである』と、一粒の種から肥料も使わずに一万三千個も実のなるトマトの巨木を作ってしまった植物学者野澤重雄、1頭の象と深い愛情と信頼関係を結んでケニアで象の保護活動を続けるダフニ−・シェルドリックなどを丹念に撮った映画です。ひとりでも多くの人に伝えたい、子ども達に伝えたいと、友人4人と共に自主上映を決意し、電気とメカに強い私が映写技師の講習を受けて16ミリを廻しました。ひとつの美しい映画を観るのに、会場に入ったところからが映画の始まりと、主婦の手作り上映ではなく、かなりきちんとした営業を心がけています。会場設営からアナウンス、ユニフォーム、チケットは裏まで気を遣う懲りようで、今までに第4番まで上映しました。

 第2番は『人の心は無限の可能性を秘めている』ことを実証する海洋冒険家ジャック・マイヨール、14世ダライ・ラマ法王、天文学者フランク・ドレイク、森のイスキア主宰佐藤初女の4人が登場します。

 第3番は写真家星野道夫の辿った道を、魂の旅をします。彼はアラスカに移り住み、その風景や動物の中に目に見えない『いのち』を撮り続けた人です。神話の中に秘められた、人間が宇宙的スケールで動いている大自然の営みと調和して生きてゆくための様々な叡智を、未来の世代にどう伝えていくべきかを探す旅を始めていました。彼の生涯と彼の出会った人たちには深く感動しました。何度観ても同じところで涙が流れます。それはもちろん悲しみからではなく、感動でもなく、共鳴・・・でしょうか。彼は私と同い年、慶応の経済に行った人はキャンパスで彼に出会ってるはず、今度の同窓会の時には聞いてみようと思いつつ、いざ皆に会うと、そんなことはすっかり忘れている私です。

 第4番の沖縄の版画家、名嘉睦稔もまた同い年です。(私は3月生まれなので)同い年の人たちがこうして素晴らしい生き方をしているのは嬉しいことです。

 さて、この秋第五番が発表されました。テーマは『全ての存在は繋がっている』。誕生と死を見つめます。今までに登場した人たちの現在がまた感動的です。お産のシーンもあるので、これから子どもを産み育てていく若い人たちや子育て中の人たちに是非観ていただきたい映画です。これから1、2年のうちに全国で自主上映されると思いますので、近くで見かけたらどうぞご覧になって下さい。私たちは久留米で来年の6月に上映します。お近くにお住まいの方は、いらして下さいね。あ、いないか。


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