● 北から南から ●

全国で活躍する同窓生からのメッセージ(敬称略)

長崎 慶三(昭和55年卒) 広島県在住

研究所全景:名所宮島は鳥居さんの付近以外はほとんど原生林です。
研究所はその宮島原生林を向かいに望む広島の西端に位置しています。


夢 の 形
独立行政法人水産総合研究センター
瀬戸内海区水産研究所 赤潮環境部赤潮制御研究室長

家族写真:去年の夏のスナップです。
娘のメイはこの3月でようやく2歳になりました。
お母さんに似てお喋りモード全開です。
 私は現在、宮島の対岸にある独立行政法人水産総合研究センター瀬戸内海区水産研究所で赤潮に関する研究に携わっています。昨年立ち上げられました赤潮制御研究室というセクションを任され、室長1名 室員0名という苛酷な人員構成のもと、日々研究に、事務に、雑用に追われ、過疎地にある分校の一人校長のような気分を味わいつつも、充実した時間を過ごしております。

 先の公務員減らしの際に、国立研究機関は全て法人化、関係省庁との連携は明らかに薄くなりました。これからは研究者自らの手でお金を稼ぎ、研究を進め、組織を守っていきなさいよ。「研究機関の自治・自由」を謳って作られた独立行政法人ではありますが、民間の持つ厳しさや合理性を備えていない状態で急に野に放たれ、迷走しているという印象は避けられません。頑張る研究者を適正に評価して応援する機能が機能していない(公務員時代の悪平等精神が払拭されていない)状態で、「研究」という開拓的性質を持つ仕事に対して高いモチベーションを維持することの難しさを、行政サイドの皆さんに理解していただくのはなかなか難しいようです。

 では大学なら。最高学府の大学ならば、夢のような素晴らしく合理的な教育・研究のシステムが整っており・・・。そんなジョークに教授たちももう笑わなくなってきました。学生を「お客様」と呼び、学位(博士号)を幾人にばらまいたかで評価されるような誤ったシステムの中で、大学の先生たちも元気をなくしているように思います。日本の研究文化は間違いなく危機的な状態に近づいているように感じます。

HcV感染ヘテロカプサ写真:
ウイルスに冒され死んでいく赤潮プランクトン
の電子顕微鏡写真です。赤潮も他の生物と同じように
ウイルス病に罹り消えていきます。
 私の研究室では、赤潮を抑える天然微生物(とくに有害プランクトンを殺す性質を持ったウイルス)に関する研究を行っています。すでに、赤潮の消滅過程においてある種のウイルスが重要な影響をもたらしていることを示す証拠がいくつも見つかりました。また、これらの有用なウイルスを分離して飼う技術も確立できました。天然の「赤潮を抑えるウイルス」を上手く利用することにより、環境や生態系に対して大きな負荷を与えない「マイルドな赤潮防除技術」を開発することが、私が現在研究している一つの大きな目標です。

 研究を取り巻く状勢は必ずしも追い風ばかりではありませんが、(正職員でない)若い研究者が上記のウイルス研究に興味を持ち、熱心に取り組んでくれている姿は嬉しいものです。私の研究室では今3名の若手研究者(の卵)たちが働いています。朝6時台から夜遅くまで(勿論残業費などつきませんが)、パソコンの前で忙殺されている私を尻目に、彼らは濃い「研究者時間」を過ごしています。年齢とともに少しずつマネージメントの仕事が増えるのはどこの世界でも同じでしょうが、彼らのそんな姿を見ていると羨ましい気分にさせられるのも事実です。人にモノを教えるのは苦手な性格ですが、結局、「上手にその相手の窯の温度を上げてやることさえできれば火は自然に着く」ということを彼らは教えてくれます。

 昔とは異なり、研究者が自身の研究成果に自己満足しているだけで許される時代は終わりました。これからは、成果を積極的に世に伝えることで知的資産の蓄積に貢献し、産業として活かすことで実学的な貢献を果たすことが求められています。私自身の実働研究者時間は残り十数年。その間に、いろいろな夢を形に。目指す研究が大きな実を結ぶことは勿論、その過程で何人かの良い魂を持った研究者を育てることができればと考えております。


 研究室のHPができました。お暇なときに覗いていただければ幸いです。
 http://www.nnf.affrc.go.jp/  (→赤潮制御研究室のページへ)



↑ 実験風景:写真を撮るというので皆笑っていますが、
いつもはもっと真剣な表情(のはず)です。
制御研写真:  →
研究室のメンバーの写真です。後ろは宮島・原生林。
 


 
岡山朝日高校同窓会公式Webサイト