|
|
● 北から南から ● | |
|
|
|
堀山 亮 (平成9年卒) 青森県在住 | ||||||||
生まれて初めての東北暮らしとなった、この青森に住んでから3度目の冬を迎えようとしています。私が青森に住むことになったというのも、うちの会社は全国勤務で、初めに勤務地の希望を聞いてきます。私は父の転勤で中国・四国地方を回っていたのでどうせ働くなら別のところにと思い、あまり何も考えずに「東(日本)ならいい」と言ってしまいました。その結果(?)青森が私の初任地となったわけです。 今住んでいる弘前市に引っ越したのは去年の7月です(はじめは青森市に住んでいました)。青森県の西部、津軽地方に位置する弘前市は津軽藩の城下町でした。弘前城があった弘前公園の周辺には、市役所や裁判所など官庁が立ち並び、今でも市の中心部となっています。 弘前市の主な産業は農業と観光です。 農業といえばりんご。全国一の生産量を誇ります。ちなみに、この津軽地方で誕生したりんごの品種「ふじ」は、世界で最も多く生産されているそうです。
主要産業となっているりんごですが、最近は苦境が続いています。消費の低迷などで、ここ数年は価格が落ち込んでいました。さらに今年は台風で収穫前のりんごが落下する被害が相次ぎました。落ちて傷がついたらリンゴジュースなど加工用に回さざるを得ず(傷によっては堆肥にしか回せないものもあります)、取引価格も大きく下がります。また、落ちなくても枝にぶつかったりして傷がついてしまうと見た目が悪くなるということで、価格を下げる要因になります(おいしければ多少の見栄えはいいんじゃないかという気もしますが・・・)。 しかし今年は味や着色など品質がよい上、台風の被害を受けなかったリンゴをいち早く確保しようと、市場の品薄感も重なり価格は好調だということです。台風被害に負けずに何とか価格低迷から抜け出してほしいものです。 もう一つの観光ですが、弘前市は年間400万を超える観光客が訪れる東北有数の観光都市です。ご存知の通り、弘前公園は全国有数の桜の名所です。園内に植えられた2600本の桜が可憐な花を咲かせる大型連休の期間には、「弘前さくらまつり」が開かれます。今年は全国から200万を越える観光客が訪れました。
このほか、勇壮な武者絵が描かれた「ねぷた」が練り歩く「弘前ねぷたまつり」や雪の燈籠(とうろう)が弘前公園内に立ち並ぶ「弘前城雪燈籠まつり」など、四季を彩るさまざまな祭りが開かれます。青森県では去年の12月に新幹線が開業したこともあって、訪れる観光客もますます増えています。しかし、こちらも不況の影響か、観光客が増えたからといっても必ずしもお金には結びつかず、土産物屋など売り上げを見るとあまり増えていません。また、例えば「さくらまつり」にいくツアー商品は多くの旅行代理店が売り出しています。しかし、弘前公園を見た後の宿泊先に組まれているのは隣の岩手の温泉だったりして、観光客が必ずしも県内、弘前市内にお金を落としてくれる環境ではないようです。新幹線が開通し、首都圏からの観光客が期待される中「滞在型観光の実現」が課題との声もあります。 また、弘前市は青森県唯一の国立大学、弘前大学がある学園都市としての顔も持ち、街の雰囲気も非常に静かでいいところです。この他、「日展」の巡回展が県庁所在地以外では初めてこの弘前市で開かれたり、明治・大正時代に立てられた洋風建築が数多く残されているなど、文化面での活動も非常に盛んです。農業・観光産業で栄え、学園都市としての性格も持つ城下町。弘前市は全国的に見ても地方都市として大変珍しいところだと思います。
さて、青森での生活を語る上で触れなければならないのが雪でしょう。雪のシーズンはこれからなのでお見せできないのが残念ですが、言うまでもなく岡山の比ではありません。岡山では雪が10センチも積もればそれこそトップニュースですが、青森では積雪が1メートルを超えることはざらにあります。意外だったのは、住宅街を歩いてみても全くといっていいほど雪だるまがないこと。確かに、自分の身長ぐらい降り積もった雪を見れば、雪だるまだのかまくらだのと悠長なことは言っていられません。玄関から先はすっかり雪が降り積もり、雪かきをしなければ家から一歩も外に出られないこともあります。雪というのは積もれば非常に重く、日々の雪かきはかなりの重労働です。また、除雪体制はかなりしっかりしていますが、それでも警報が出るような時には交通機関で大きな被害が出ます。 不況もあって今では一時期より少なくなりましたが、出稼ぎが多いのも、冬の間は農業などができず、経済活動が停滞してしまうためです。青森の人たちは現実の生活として雪と向かい合って生きているのだと実感させられます。 仕事でいろいろな方々に出会いますが、未だに慣れない津軽弁を何度も聞き返したり、仕事先からりんごを頂いたりと、悪戦苦闘しながらも津軽の温かい人柄に触れ、何とか今日まで続いています。実家に帰るのも飛行機を乗り継がなければならず、往復約10万円(!)もかかるため岡山からは足が遠くなりがちになってしまうのが残念ですが、一青森県民としてこの弘前にしっかりと足をつけて日々の仕事に励む毎日です。 |