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時代の変化と職業の選び方 |
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技術革新 |
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私が入社した頃は、パソコンは無く資料は全て手書き、コピーも青焼き、数値計算も簡単な電卓で手作業、E-メールは勿論の事FAXもない時代
――言ってみれば長閑な時代。
その後の技術革新で、仕事のスピードがこの50年間で数十倍?になり業務の効率化のメリットを享受している。今後も色々な技術が開発され(特に医療技術、IT関連)目まぐるしく変化する時代が続きそうである。
――これから数十年後の姿は誰にも正確に予見は出来ない。 |
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(2) |
経営環境の変化 |
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我々の同期の集まりの中でよく話題に出るのは、入社した当時の会社(企業・官公庁等)がそのままの名前、或いは経営形態で続いているのは三分の一以下である。
――これからも企業の離合集散は進むと見た方が良いであろう。 |
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(3) |
就職先の選定のポイント |
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学校で勉強したことが直接的に役立つ事は、技術専門職を除けば比較的少ない。 |
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A |
外から得られた企業情報だけでは見えない部分が多く、また、中に入っても会社を取り巻く環境は常に変化してゆく。 |
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B |
従って、就職は賭け的要素が大きいと覚悟したうえで、現時点での当該企業或いは業界の業績等に拘るよりより、自分のやりたいことの実現可能性を少しでも追い求める事がポイントと言えるでしょうか。 |
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因みに私自身が就職先を航空会社に決めた理由は「海外を知る機会が多い」といった単純なものであったが、お陰様でこの点に関しては実現率100%以上であり満足している。 |
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会社と自分の距離 |
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最近ワークバランスという言葉がはやっているようであるが、私自身は以下のような基本的考え方で会社人生を送ってきた。 |
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会社は自分の人生の全てではない |
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2013年11月伊勢神宮遷宮記念能舞台で
笛の演奏奉納 |
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会社は飽くまで生活の糧を得る場との考えのもと、会社とは一定の距離を置き、仕事を自宅には持ち帰らず、会社を出れば極力会社の事は忘れるように努めた。その為、会社の寮とか社宅には入居しなかった。
そうは言っても、職場の人或いは社外関係者との意思疎通も重要であるので、会社帰りに一杯や麻雀などの付き合いは積極的に行った。又、必要な残業は厭わず行ったので、月100時間を超えたことも偶にはあった。働き盛りの頃は、外から見ると「会社人間」に見られていたであろうが、「会社が全てではない」という意識は常に持つようにしていた。 その為にも有給休暇は有効に活用する事とし、詳細な記録をとっている訳ではないが、平均して9割以上は消化したし、旅行にも積極的に出かけた。 |
(2) |
プロとしての矜持 |
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古典芸能の世界(能楽)に少し足を踏み入れていた関係で、芸事を習うため月謝を払う素人(アマ)と、素人から金を貰う玄人(プロ)の歴然とした違いを見ていたので、サラリーマンと云えども会社から金をもらう以上与えられた職場でプロとして会社に貢献出来るよう、別の言葉でいえば「プロとしての矜持」が持てるよう努力した。
勿論、与えられた職場が常に自分の適性に合っているかどうかは保障の限りではないが、その職場でのプロになるべく少なくとも自分自身で努力するとともに、必要な時には同僚や先輩の助けを求めることも重要である。 |
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人脈の構築 |
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学校で習った事や入社後勉強した事などを積み重ねても、能力には限りがあるし自分自身で常に適切な判断が出来るとは限らない。従って社内外で人脈を広げ、それを活用することにより自分の業務処理能力の質的向上を図ることが極めて有用であると考え、私自身もそれなりの努力をしてきた。人脈の構築にあったてのポイントは |
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(1) |
信頼関係の構築 |
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お互いに腹を割って本音で話せる人、すなわち信頼関係の築ける人を選ぶことが肝要である。このためには常日頃、自分の考えは遠慮せずに言って他人の意見にも耳を傾けることは勿論、他人の悪口を言わないことも重要である。他人に適切な忠告をしてあげることは必要であるが、常日頃悪口を言っていると他人の信頼を得ることは難しい。この「他人の悪口を言わない」教えは私の能の師匠が就職する際に諭してくれたものであり、感謝している。 |
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(2) |
裸の王様にならない事 |
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自分の考えと同じ様な見方をしている人ばかりではなく、自分にとって嫌な事でも話してくれる人を人脈に加え、特に人の上に立つようになったら、裸の王様にならないように自分から努力することも肝要である。 |
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(3) |
人脈の拡大と長期的な維持 |
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自分の職場並びに業務上密接な関係のある所のほかに、直接的には関係のない職場の人についても知り合う機会があれば積極的に人脈に加えるべきである。更には、社外の人脈も貴重な財産となり、この社外人脈を開発するには、高校や大学の同級生・同窓生のネットワークが大いに役立つことは言うまでもない。こうして人脈が拡大出来れば、「社内の常識が外から見れば非常識」と見られる様なことについても、見えてくることがある。
更に、これが一番難しい事であるが、長期的な関係を維持することが重要である。社内外を問わず、直接的接触がある間はこの人脈を維持しやすいが、転勤などで直接的な結びつきが無くなった場合には疎遠になって消えてゆくことが多い。然しながら、これはと思う人脈は定期的な挨拶、飲み会、マージャン(どういう方法が適切かは、人によって異なるが)等による付きあいを続け長期に維持する事が望ましい。 |
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海外勤務 |
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所謂グローバル化が進み、海外へ支店や子会社を展開している企業も非常に多いと思いますが、海外勤務につて触れてみたいと思います。 |
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百聞は一見に如かず |
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今や色々な手段で、各国の情報は入手できるが、旅行や出張などで実際にその国に行くと、やはり日本との違いを実感できます。そこに住んで生活をすると更に深く異なる文化との交わりが経験できます、というよりも住んでみて初めて実感できることが極めて多い。
又、外から日本を見ることにより、日本に住んでいただけでは分からなかったようなことが発見できることがあり、自分の思考に幅が出来てくると思います。
例えば
・アメリカ大陸を横断するのに飛行機で6時間も掛かり時差も3時間―――何となんと大きな国か!
・ロンドンのゴルフ場の芝は、冬に青々としていて夏には枯れている。
・バンコクでは12月にツバメがスイスイ飛んでいる。
・欧州の陰鬱な感じの宗教画――長い陰鬱な冬を経験して初めて理解できる。
・クリスマスには電車も止まる。
・秋に日本に出張すると「集く虫の音」に驚かされる。
(この表現は外国語で適切に表現するのは難しいでしょうね。) |
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(2) |
その国の人との交流 |
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ロンドン時代 West Wimbledon Societyの卓球仲間 |
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海外赴任された場合、仕事以外でもその国の人と交流する事により海外生活を幅広く楽しむことが出来ると思います。
(勿論赴任する国によって、又、どういう職責で派遣されているかによって大きく状況は異なりますが--)
私の場合、合計3回通算9年の海外勤務をしましたが(ニューヨーク、ロンドン、バンコク)、どこも生活環境は良かったので恵まれていたと思います。
2回目のロンドンでは家族(子供3人も)も一緒でしたが、子供にとっても掛け替えのない経験が出来たと思います。
ロンドンでは地元のWimbledon Societyや卓球クラブにも入り、大いに交流を深めることが出来ました。その時に出来た友人達とは今でも交流を続けています。Wimbledon
Societyで日本について講演を頼まれましたが、改めて日本の歴史・文化・地理的特徴等を勉強する良い機会になりました。
私のロンドン時代の同僚で、地元のフェンシングクラブに入って練習していた人がいますが、彼は今も当時のクラブの人たちと交流を続けています。
最近若い人たちが余り海外勤務に前向きでないという話も聞きますが、積極的に海外勤務を楽しんで頂ければと思っています。 |
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余暇と趣味 |
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先に「会社は自分の人生の全てではない」という意識を持つことを薦めましたが、これを実践するためにも趣味をいくつか持ち、継続することが大切です。所謂働き盛りには余り時間的余裕がないという現実がありますので、学生時代から続けているもの、或いは社会人になって新たに興味を持って始めたもの、何でもよいから細くても良いので長く続けることが肝要です。定年後に「さあ始めるぞ」と気合を入れるのも結構ですし、それを大いに楽しんでいる方も大勢いらっしゃいますが、若い頃からの趣味を続けた方が、よほど楽だと思います。
私は、高校の時に卓球部に所属していて、卒業後は一時中断していたが、子供が小学校に通うようになり学校の体育館での同好会で再開し(家内はこの時に始めた)、その後、公民館の同好会などにも加入して40年近く継続しています。海外勤務の時も大いに役に立ちました。
会社に入ってから碁を教わり、これも(へぼ碁)細々と続けています。
又、能楽関係(謡・囃子)も続けていたので、退職後の人生を大いに楽しめています。 |
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余談 |
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最近のIT技術の進化で、コミュニケーションの速度と範囲が大幅に拡大し便利になってきているのは間違いない所ですが、他方マイナス面もあると思います。 |
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人と人が直接に接して仕事や会話をする機会が、長閑な時代に比べて少なくなり、意思疎通が表面的なものに留まっている(一方通行或いは機器を介在したコミュニケーションの増大)ように思われる。 |
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情報過多で、正しい情報の取捨選択が難しくなっている。某国大統領のようなTwitterによる不確かな情報発信へはどう対応して良いのか、私には分からい。 |
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システムに依存する度合いが極めて大きいのでトラブル発生時のリスクは極めて大きくなっている。
新IT時代には、こうした問題点に十分に留意する必要があるが、長閑な時代に戻ることは出来ない。又人工知能(AI)の進化も留まるところを知らない。
これからどのような方向に進むのか、楽しみでもあり、心配でもある。 |
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2007年7月 退職後の旅行で、ロンドン時代のST.Paul Table Tennis Clubの仲間と15年ぶりに再会 |
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