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国内で活躍する同窓生(敬称略)


吉田 健太 (平成 18年卒)    神奈川県横須賀市在住

「西から東から」
JAMSTECで電子顕微鏡を操作している筆者。
30μm程度の領域をイオンビームで精密に
加工しているところ。
 これは受験生向けとっておきのライフハックなのですが、進路指導の先生から「東大は目指さないの?」って言われたときに「関ヶ原より向こうはとりあえず行く気無いんです」と答えておくと、二度と東大を薦められることはなくなります。まあ、そんなやりとりをして京都大学へ進んだ私も、今は神奈川県は横須賀市で海洋研究開発機構の研究員(任期5年)をしているわけですが。


 2005年度卒の吉田健太と申します。簡単に来歴を述べますと、2006年春に朝日高校を卒業の後京都大学理学部へ入学。山歩きが楽しそうだという理由で同地質学鉱物学教室へと進み、そのまま修士課程2年と博士課程3年も京大で過ごし、2015年3月に博士号を取得しました。

 職に関しては綱渡りをしていまして、2015年度の職が決まったのは2015年3月中頃、大阪市立大学で一年こっきりの非常勤講師をすることに。2016年度からはお向かいにミニッツ急航空母艦9番艦ロナルド・レーガンが見える国立研究開発法人海洋研究開発機構(JAMSTEC)で任期付きの研究員としてお世話になっています。


 JAMSTECといえば掘削船ちきゅうが有名ですが、私はちきゅうには乗ったことはありません(こないだ朝日高生が修学旅行で遊びに来た時もちきゅうを見ることはできていません)。なにせメインの職場には大きすぎて入港出来ないもので。因みに研究所の名前として「海洋」を戴いておりますが、海以外にも地球科学を基盤とするさまざまな研究を行っている人が居ます。私は大学以降、日本列島地下のようなプレート沈み込み帯で、地下深くに沈み込み様々な化学反応を経て形成される変成岩を通して、島弧や大陸がどうやって成長してきたのかの研究をしています。だいたい年に一回程度フィールド調査に行き、現地の地質や岩石の調査・試料採取をしています。山から採ってきた石をプレパラートに加工したり、光学顕微鏡や電子顕微鏡で観察したりと、室内外で様々なことをしています。最近では、ガリウムイオンを非常に精密なビームにして、数十ミクロンのサイズの箱として削り出し、中に入っている「水」を凍らせた上で化学組成を分析する、というようなひじょーにマニアックな研究を行っています。
キルギスタンでの地質調査時の筆者


『なんで、私が研究者に!?』

 四〇学院の広告、ってわけでもないですが、ふと振り返って考えてみても研究者になることを明確に意識したきっかけというようなものは、なかったように思います。強いて言うなら、朝日高校で聴いたOB講演会で,講演者の方がWatson& Crick (1953) “Molecular structure of nucleicacids”の論文を持ってきて、「1ページで1億円ですよ!」と力説されたのは今でも印象に残っています(他の話の内容は覚えていませんが)。いやまあ別に一攫千金狙いで研究者を志したわけではないのです。そもそもノーベル地球科学賞って存在しないですし。

 京都大学は修士課程進学率が結構高めで(55%くらい)、就職活動を先延ばしにして周りと一緒に進学をしていく間に、なんとなく状況が整っちゃって、いつの間にか研究職で食っていけるようになったというのが実際の所だと思います。私が学部生の頃(2010年頃)は、世の中の景気も大概冷え込んでおり、大学院重点化の煽りを受けた余剰博士問題の影響も見えているような状況で、研究職を志すのはなかなかしんどそうに見える時期でした。しかし,大学院で5年間研究をシコシコやってる間に、先輩達の就職状況も徐々に改善していき、なんとなく「これはこのまま食っていくのもワンチャンあるな」という見通しが立ち始めました。何より、博士課程2年の時に日本学術振興会の特別研究員DC2に採用されたことで、自分の能力でそこそこ上手く立ち回れそうな手応えが掴めたことが大きかったように思います。


 ところでこのコラムコーナー、「北から南から」という名前ですが、残念ながら択捉も沖ノ鳥島も今のところ行ったことはありません。その代わりに、ここ2年ほどで仕事の調査で最東端の南鳥島と、最西端の与那国島……のちょっと手前の石垣島までは行く機会がありました。どちらも地質学的に面白いポイントがいっぱいあるフィールドなんですよね。南鳥島は上陸したわけでは無く周囲の海底調査を行っただけですが、石垣島では調査のみならずご当地の食事や泡盛を堪能することも出来、大変充実した日々を過ごすことが出来ました。請福美味です。


南鳥島の近くで見た夕暮れは、水平線に沿ったグラーデーションがとても綺麗でした。(クリックすると拡大します)

 地質学は、現地のフィールド調査が非常に重要でありまして、今までにもヨーロッパや中央アジア、など様々な所に調査へ赴き、その土地の様々なものを楽しんで来ました。特に私が力を入れているのが現地のお酒の調査で、チェコやスロヴァキアのビールはほんとうに最高としか言いようがないので何度でも行きたいと思ってしまいます。Dálčiceの無濾過ビールめちゃうまです。
おかやまマラソン完走時の筆者

 また、野外調査のためには体力作りも重要、ということで、年に一回フルマラソンを走るようにしています。おかやまマラソンは幸運なことに第1回から毎年抽選に勝てておりまして、2018年は2年ぶりに5時間切りで走ることが出来ました。当然、走った後はビール!岡山が誇る地ビールを堪能するのが完走の最大のモチベーションです。御崎最高です。


 そんなこんなで高校を卒業してもう12年以上経つわけですが、今でも管弦楽団のコンサートではスタッフとして参加していますので、お見かけの折には是非声を掛けていただければと思います。シンフォニーホールでぼくと握手!


2018年12月 年の瀬に


吉田健太 twitterアカウント @metamorphicfl

   
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