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世界で活躍する同窓生からのメッセージ(敬称略)
大岡 靖  (昭和56年卒) 香港

中国周辺の地域、香港と台湾

 同窓生のみなさん、こんにちは。私は大学を卒業して昭和61年に日本郵船(株)に入社、その後現在に至るまでに台湾(台北)3年間(2001年〜2004年)、香港3年半(2010年〜現在)の海外駐在生活を経験させてもらっております。台湾と香港の両方に駐在経験があると知人に言うと、「台湾と香港どっちがいい?」という質問をよく受けます。
 そこで今回、今住んでいる香港について記述する前に私の独断と偏見で台北と香港についての比較からはじめたいと思います。

(1)香港と台湾(台北)

<言 葉>
 香港、台湾ともに標準語は北京語、現地語として香港は広東語、台北は台湾語があり、それぞれ北京語とは異なり北京語しか理解しない人には現地語は理解できません。香港はほとんどの場所で英語が通じるので我々駐在員には不自由は感じませんが逆に日本語はほとんど通じません。
 一方、台湾は(日本と同じように)ほとんど英語は通じませんが、日本語が通じる場所もそこそこあって、日本語+片言の北京語、でなんとかやっていけます。英語は日常生活では必要ありません。台北駐在中に北京語を一生懸命勉強した結果、生活に困らない程度は北京語を使えるようになりましたが、香港に来てからはもっぱら英語のため北京語を使う機会も少なく(逆に中国人と間違われるから北京語はあまり使わないほうがいいとのアドバイスもあり)忘れかけているのでなんとか維持したいと考えています。
広東語は私には難しすぎて全く勉強していません。
圓山ホテルから見た台北市内

香港島 夜景

<文 化>
 基本は中華の文化ではありますが、台湾は日本文化を今も残しています。75歳以上の老人は日本語教育を戦前に受けているので日本語をしゃべる事ができますし、街には今でも日本時代の建物、神社が残っているところもあります。香港は英国文化で、英国人がいまだに多く住んでおり、中国返還(1997年)後あまり時間が経っていないこともあり、英国時代の街並み、ルールが色濃く残っています。香港人は決められたルールは守り、横入りはしないで黙って長い列に並びます。中国本土ではありえない事ですがこれも英国流でしょうか?

台北近郊の北投温泉にて


マカオにて− 筆者
香港の私の住んでいる家(狭い!)

 台湾生ビール
<人>
 台湾は親日的で日本人に優しいとよく言われますが私が駐在していてもまさにその通りだと感じました。香港は日本人に対して悪い印象は持っていませんが特別でもない。フェアには扱ってくれます。
私は台湾にいても香港にいても現地語でよく話かけられたので見かけは現地人と思われていたようです。台湾人も香港人も他人の目を気にせず(身形なども)思った事はなんでも躊躇せず発言するので最初は戸惑いますが慣れれば自分もそうしている事に気付き心地よくなってきます。但し、電車の中やエレベーターの中で大声で携帯電話で話をするのだけはやめてほしいですね。

<食 事>
 これもよく”どっちがおいしい”と聞かれますが、金があれば香港、なければ台北、と思います。お金さえ出せば香港では世界中の旨いものが何でも食べられます。特に中華料理は世界一と思います。台北は”そこそこ”なものが安く食べられます。日本料理の店の数は圧倒的に香港が多いですね。

<住居>
 我々駐在員レベルの家族同居で住む家(アパート)に関して言えば、台北の方が居住環境は良いと思います。香港はそこそこのレベルのアパート(マンション)に住む事はできますが、家賃が高いため、部屋がどうしても狭くなってしまいます。私が今香港で住んでいるアパートも香港に来る前に日本で住んでいたマンションよりも狭いです。海外駐在になると広い家に住める、というのは香港には当てはまらないですね。

<街並み>
 私は台北の方が好きです。香港は高層建築だらけで空が狭く感じます。一方台北は高い建物があまりなく、日本の地方都市のような感じでちょうど心地良いですね。


<物 価>
  香港では、ローカルの食生活をすれば日本の0.6倍、日本と同じような食生活をすれば1.6倍という話を聞いたことがあります。香港にある日系スーパー(そごう、ジャスコ、アピタ等)で日本の食材を買って家で作って食べると日本の1.6倍かかるという事です。台湾は台湾の食材(品質は中国産より良い)が安く手に入り価格も安いので日本よりも安く出来るのではないでしょうか。

以上、今住んでいる香港と10年前に住んだ台湾(台北)の比較をしてみました。あとはゴルフ環境や夜の遊び/飲み、教育環境など比較するものは他にもありますが、ここではやめておきます。

香港のトラム(路面電車)
近距離の移動に私はよく利用します。
料金は大人一律HK$2.3(約30円)

香港日本人学校小学部香港校


2)香港 − 中国ではない

 2010年に家族(妻と娘2人)と共に香港に赴任して3年半が経過しました。10年前に台北駐在の経験があったので、「台北とあまり変わらないだろう」、からスタートした香港生活ですが、上記のような違いが”発見され、同じ中華圏でも違うものだなあと感心しています。
勿論共通部分も多くありますが。中国本土にもよく出張で出かけるのですが、中国本土もまた香港、台北と違います。一言では言い表せないですが、香港は@英語が通じるし、A外国人に対してもフェアでB何事に対してもオープンであり、Cルールが明確、なところが外国人にも住みやすい街の所以なのでしょう。
私の仕事上のお客さんにも香港在住20年以上という白人が何人もいます。それほど香港は外国人フレンドリーな国なのです。日本人に対しても同様に。1997年に中国に併合されましたが、香港は中国とは全く別の”国”ですね。

(3)香港 − 日本人学校

 子供が日本人学校に通っているので、少し触れてみたいと思います。香港には日本人小学校が2校、日本人中学校が1校あります。日本人小学校は香港島側に1校(香港校)と九龍側に1校(大埔校)あり、居住地によって自動的に振り分けられます。児童数は香港校が現在342名、太埔校が507名です。

 中学校は香港島に1校のみで九龍側に住んでいる人もこちらに通っています。香港はかつては在留邦人が3万人以上いた時期もあったそうですが、今は2万人強で年々若干ながら減少しています。そのため日本人学校の生徒数も減少傾向にあり、その中でも特に香港小は、オフィス賃料の高騰を避けて日系企業のオフィスが香港島から九龍側に移転し、それに伴い居住地域も香港島から九龍側に移る日本人駐在員が増えているという事情があり、香港小は年々減少、大埔校は増加、全体では減少となっています。

 教育内容は基本的には日本の学校と同じですが、小学校ではネーテイブ教師による英語の授業が週3時間あったり(1年生から)、英語での図工の授業があったり、と英語教育に力を入れています。また児童生徒の中には親の一方が日本人でない子供(所謂ハーフ)もいて、日本人文化及び日本語の中にいても多様な人種や文化と接するよい機会ともなっています。また児童自身もほぼ3年毎に転入、転出を経験する子供が多いので、誰に対しても優しく接する態度が身に付き、いじめの問題もさほど心配することがないようです。逆に日本に帰った時の反動が心配にはなりますが。

 小学校高学年になると宿泊学習旅行があり、5年生は広州でトヨタの工場見学等、6年生は上海に修学旅行に行くというのが恒例となっていましたが、昨年9月の尖閣問題以降、行き先がそれぞれ、香港内(5年生)、沖縄(6年生)に変更となったのは非常に残念です。現地の学校との交流会も年一回程度あり、その時にはたどたどしい英語でコミュニケーションをとっているようです。

 香港の場合、他のアジアの国々と同じように日本人で現地校に行く人はほとんどいません。インターナショナルスクールはカナダ系の学校が英語が出来ない子供も受け入れてくれるため日本人には人気があります。欧米人が行くようなインターはよほど英語ができないと無理で、英語が出来る香港人も順番待ちをしており、我々のような普通の日本人にはハードルが高すぎます。

(4)香港 − 貧富の差

 香港に巨大なアヒル出現!!!  【2013年5月】
 香港には信じられないような大金持ちがいる反面、厳しい生活環境にある人たちも多くいます。政府が設定した貧困線、去年の統計で約131万人になるそうです。月収が1人家族でHK$3,600(45,000円)以下、2人家族でHK$7,700(96,250円)以下、3人家族でHK$11,500(143,750円)以下、4人家族でHK$14,300(178,750円)以下、それが貧困にあたるのだそうです。131万人は約19.6%、香港の5人に1人が貧困になるそうです。貧困ラインの金額設定が少し高いような気もしますが、高騰する住居費を勘案するとこれが妥当なのでしょうね。ポルシェ、ランボルギーニ、フェラーリを街中で目にしてもあまり珍しく感じなくなったこの香港で、5人に一人が貧困とは皮肉なものです。


(5)香港 − アマさん

日曜日のアマさんたち
(香港中央図書館前)
日曜日のアマさんたち
(ビクトリア公園)

 これは人の名前ではなくお手伝いさんの事です。香港の人口約700万人の内、香港人、中国人を除いた外国人人口ナンバーワンがフィリピン人とインドネシア人でそれぞれ15万人づつくらいいます。そのほとんどが住み込みで働いているお手伝いさん(アマさん)です。
香港人はお金持ちでもなくても中流の家族でもアマさんをやっとって家事や子供のめんどうを見させています。アマさんの費用を払っても共働きの収入でお釣りがくるという計算です。
アマさんは日曜日が休日なので、私の家の近所の公園は日曜日にはアマさんであふれかえっています。最初何事かとびっくりしましたが、今は慣れました。

(6)香港 − 最後に

 今後香港の地位(位置付け)がどのようなものになっていくのか? 香港人自身の将来に対する不安や焦りとも密接に絡んでくるこの問題にどのような方向付けをしていくのか今後の香港政庁(及び、中国の北京政府)の舵取りに注目していきたいと思っております。


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