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国内で活躍する同窓生(敬称略)
内海 伸美(昭和41年卒) 横浜市在住

フィンランドの魅力
 十年前初めてフィンランドを旅した目的はサヴォンリンナにある古いお城オラヴィ城の中庭でオペラを鑑賞する、ピアニストの舘野泉さんが音楽監督を務めるオウルンサロ音楽祭を鑑賞する、作曲家シベリウスの生まれた国で彼の音楽に触れるという音楽中心の旅でした。

 フィンランドのあの自然の中で生まれる音楽の美しい響きに感動したのはもちろんでしたが、美しさと厳しさを併せ持つ自然を人間の都合の良いように、人間の力(知恵)で開拓したり破壊するのではなく、有りのままの自然を受け入れながら、人がいかに豊かにに生きていくかを模索している国だということを知り、フィンランドの人々の考え方、生き方に感銘を受けた旅となり又是非訪れたい国となっていました。

 今回は脳溢血で倒れられて、左手のピアニストとして奇跡的な復活をされた舘野泉さんが音楽監督を務めるのは最後になると言う「オウルンサロ音楽祭」を聴くためと、日本の子どもたちの学力低下という教育問題が深刻化してきている中、子どもたちのPISAの成績が世界1位だったフィンランドの教育現場、公立の小学校の見学ができ現場の先生からお話を伺えるという2つの目的ができて、再びあこがれのフィンランドに出かけました。

 オウルンサロ音楽祭は今回10回目で世界の若手の才能のある演奏家を発掘し育てる目的で、舘野さんが始められた音楽祭です。日本人をはじめ、アジア、ヨーロッパなどから多くの音楽家たちが育っているそうです。期間中色々な会場で演奏会が行われますが、今回は日本の有名なアコーディオン奏者の方が体調を崩し2時間の演奏が1時間になるというハプニングがありました。でもその後、舘野さんが1時間弱の演奏をしてくださいました。ご自分の演奏会がその日の夜あるというのに・・・また会場を取るときスタッフの手違いで大聖堂が取れなくてご自分の演奏会場は地区センターの講堂兼体育館といった場所となったそうです。でも反響版を置いたり、グラディエーションの布をバスケットゴールの輪っかに下げたり、フロワースタンドの間接照明を上手に使ったり、椅子の並べ方にも細かい心配りをして会場を整え、お客様を迎えられたそうです。もちろん演奏は素晴らしく、聴衆は大満足で拍手が鳴りやまず・・・でした。

 舘野さんご自身のお人柄によることはもちろんでしょうが、若手のスタッフ達がテキパキと働き、思ったようにことが進まなくても、工夫をし、手作りのコンサートを楽しみながら、お客様にも喜んでもらえることを心がけているそうです。またそれらの事が自然に行われる感じが素晴らしいなあと思いました。誰の責任だとか、演奏会の内容が違うじゃないかなどと騒ぎ出す国ではないようです。本質は何かを見極める目をみんながもっていて、豊かな自然の中でゆったりした生活を楽しんでいるように感じました。

教 室

 フィンランドの国は、面積は日本の国の四国を除いたくらいの広さで、人口は約520万人。首都ヘルシンキが1番大きな街、そこに約50万人が生活しています。資源はほとんどなくて、森と湖の国、すなわち、木と水と人しか無い。その国が平和に、そして豊かに生活していくには何が必要かと考えたとき、人しかいない。人の頭脳を育てることだということに行き着いたそうです。そこで教育の政策を転換し、「勉強は楽しいことばかりではないが、自分が大きくなったとき、自分を助けてくれるものらしい」と、子どもが自発的に学習に取り組むように指導しているそうです。そしてPISAテスト【学習到達度調査】(応用力という学力を測るテスト)の1位に躍り出たわけです。

 日本は、今まで上位の成績だったのに段々PISAの成績が悪くなってきて、大慌てし、教育改革をすすめています。が、ゆとり教育を見直し全国学力テストを行い、授業時数を増やし、成績の悪い学校は教育予算を削り優秀な学校へ予算を回す。なんて事を言い出しているそうで、子どもも、教師も自主性なんて無視され、競争をあおられ、差別される、という状況になるのでは?と私はとても気になっています。

 子どもが親や先生から言われなくても嫌がらずに自ら取り組む方法は?そんな魔法があったら教えて欲しい! そんな気持ちで、ヘルシンキからバスで30分、ヴァンターという街の小学校を訪ねました。夏休みだったので子どもたちに会えず残念!迎えてくださったのはタリア先生と校長先生。校舎を案内してもらい、その後職員室でお話を伺いました。

 「驚くことが次々と」

 教育は、国の重要課題になっています。公立学校が99%をしめ大学まで授業料は無料。学用品給食費ももちろん無料!教員は修士号を必須要件とする専門職で、尊敬され全権限が現場にあり、国家カリキュラム【学習指導要領】の運用、解釈は学校、教師に与えられているそうです。

職 員 室

 教師は授業以外の負担はなく、子どもが授業を終え、帰宅すれば先生も家へ帰るそうです。どうりで、職員室に先生たちの事務机がありません。教職員間の打ち合わせ【会議】も週1回程度、各自が責任を持ってクラスの授業を行うので必要が無いとのこと。 又、教師は学校に籍を置いたまま、別の仕事に就いたり、勉強のため国を離れることも認められています。

 【1〜3年間】タリア先生もその制度を利用して、日本に勉強に来たので、日本語がお上手、褒められると、「話すことは大体でき、わかるが、書くのは難しい」とおっしゃっていました。

 子どもたちの学力についてお聞きすると「フィンランド人も何でだろう?と、考えるが、よくわからない。ただ、本をよく読む。自分の考えを大事にする。分からないことは恥ずかしいと考えず、分かるまで尋ねる。補習を受けたいと申し出る。(分からないままにしない)勉強は楽しいことばかりでなく、辛いことや、苦しいこともあるが、自然には神様がいて見守ってくれているのだという精神性がまだこの国には残っているせいかな?」と、ユーモアを交えながら答えてくださいました。

 16歳までは、他人と比較するようなテストは無く、自分のために学ぶという姿勢が国民の間にいきわたっている様に思いました。また国の定めた指導要領も、運用権は学校、教師に与えられていて、無いに等しいそうです。でも、学校間格差はきわめて小さいというのも驚きでした。

 フィンランドの教育がそのまま日本に通用するとは思いませんし、日本は日本にあった教育がされて良いと思いますが日本も何を大事にするのか、教育で何を育てるのか、一人の親として、一人の国民として今一度教育の真髄を考え直す時なのではと考えさせられた旅でした。今回の旅でフィンランドの国がますます魅力的な国になりました。


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