● 北から南から ●

全国で活躍する同窓生からのメッセージ(敬称略)

田辺 博行 (昭和50年卒) 埼玉県在住

田辺 洌山

 < 尺八吹き南米を行く >

                尺八奏者:田辺洌山(本名:田辺博行)


1996年より岡山を含め国内各地で十数回の公演を行ってきた水・自然をテーマとしたコンサートプログラム「水の音原風景」を持って、この企画では初めての海外公演で南米(4カ国7公演)ツアーを行った。
尺八・箏・鼓の奏者、数カ所でジョイントを行う日本舞踊の踊り手、プロデューサー・コーディネーター等のスタッフも含め合計11名、ブラジルからパラグアイ・ウルグアイ・アルゼンチンと南米大陸を南下、12日間の予定のツアーであった。

出国前は日本から丸一日を要する距離と時差、各地を移動しながらほぼ毎日演奏を続けてゆくことを考えると自分の体調管理に到底自信はなく、スケジュールを組んだプロデューサーを恨んだものであった。
意に反して、日本から20数時間という機内での長さと時差による睡魔が開演前にかならず訪れるという苦痛を除けば、海外であるという緊張感もあったのだろうが誰一人体調を崩すことなくスケジュールをこなすことが出来、体力的なことに関しては私自身としても大きな自信となった。
ブラジル公演

全て公演も終わり唯一の完全フリーとなった最終日、アルゼンチン・ブエノスアイレスで観光、夜は本場のタンゴを楽しみながら食事などと、我々メンバーは疲れも忘れ開放感に浸っている時とんでもないニュースが入る。9/11ニューヨーク・テロ事件である。
私たちが翌日搭乗予定の便はアメリカ経由であったが、全米の飛行場が閉鎖で飛ばないという情報が入る。それぞれカードは持っているが手持ちのお金が不足する可能性があるので安いホテルに移動し待機していた。
終演交流

情報といえば1日2回の旅行会社からの連絡とCNN、身体も時間も自由だが観光気分にもなれず、いつ帰国できるのかわからぬ数日間を過ごした。折も折りアルゼンチンは経済危機を迎えており、窓からはデモ行進が見え買出しさえ危険かもしれないと言う状況の中、不安な思いは募るばかりであった。
結果的には4日目にヨーロッパ経由で30時間を要して帰国できたのだが、ただの尺八吹きが地球規模の出来事にも無関係には生活していないことを肌で感じた旅であった。

9/11以前にも海外公演の経験は毎年のようにあったが、思い返すと朝日高校在学中に日本赤軍のテルアビブ乱射事件があり、我が担任が亡くなった奥平氏と同じであった為メディアが多数来校し、知識のない私は新聞・週刊誌を読み漁って情報を得た記憶がある。その時が世界を感じる初めての機会であったかもしれないと、今になって思う。


イグアスの滝デモ

田 辺 洌 山  Retsuzan Tanabe  ● 尺八
 
岡山市生まれ/父、恵山より手ほどきを受ける/1975年山本邦山師(人間国宝・東京藝大教授)に師事/1980年中央大学文学部哲学科卒業、NHK邦楽技能者育成会25期卒業/1981年都山流師範となり、プロ活動開始/1985年NHK邦楽オーディション合格/1986年弟、頌山(尺八奏者)とジョイントコンサート開始、「グループ竹」を結成リサイタルを開催(以後6回)/1987年マニラ公演/1988年宮城会アメリカ公演に参加/1989年小松原庸子スペイン舞踊団に同行マドリッド公演/1992年日本の伝統色を音で表現する「色彩の間」企画・発表/1993年「風姿有韻」-秩父34観音札所・尺八巡礼の旅-を開始/1996年川越・田中屋美術館「小江戸・日本の音遊び…」開始/1996年邦楽ジャーナル誌に「田辺洌山の尺八教室」執筆、柴崎勉氏との共同企画「水の音原風景」発表/1997年初のリーダーアルバムCD・ライブVTR「水の音原風景」発表/1998年 ボルダー国際フェスティバル'98に招聘されコンサート・ワークショップを行う、9月韓国東国大学にてコンサート・講演を行う/1999年 銀座かねまつホールにて『銀座・日本の音遊び…』を再開 (現在までに4回)、スウェーデン大使館コンサート「森の音、水の響き」 企画・出演、ジャズピアニスト 嶋津健一との古典を ベースとしたライブ(現在までに3回)を開始/2000年 草月プラザ(東京赤坂)イサムノグチの彫刻庭園「天国」にて「森の音、水の響き」企画・出演、 2ndアルバム「森の音、水の響き/田辺洌山」(発売:ウォーターネットサウンド/CD) 発売、韓国公演・白寅榮氏と共演/2001年 イージーリスニング「尺八の調べ」(NRC/6枚組CD)、9月「水の音原風景」南米ツアー(4ヶ国・7公演)/2002年 嶋津健一[pf]・加藤信[bass]と共に新ユニット「J-S.Triangle」結成活動開始/現在、東京を中心に活動を続けている。
 

 
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